そう語るのは、今春、総合商社に入社した女性(23)。幼少期を米国で過ごしたこともあって、将来的には海外で働くことを望んでいる。周囲の友だちの多くは海外志向が強く、「働くなら外国に行けるような仕事がしたいよね」と話すといい、こう続ける。
「私は現地採用ではなく、3~4年の任期がある駐在員のほうがいいです。いつまでいるのかがわからない状態だと、ホームシックになってしまうと思うんです」
日本での再就職に壁
そんな堅実さをのぞかせる若い世代だが、それは、海外でのキャリアが日本で評価されにくい実態が関係しているのかもしれない。
キャリアの大半を海外で過ごし、現在ベトナムで保健医療のプロジェクト・コーディネーターとして働く橋本麻衣子さん(45)は英語に堪能で、紛争地で働いた実績もある。けれど、
「コロナ禍で日本に一時帰国した際、『子どもも欲しいし、このまま海外で転々と働くと結婚も難しいので、この先はどうなんだろう?』と思うようになり、落ちついて生活するために日本で就活を始めました。ただ、何十社も書類を出したのですが、一社も通りませんでした」(橋本さん)
なぜ、日本では簡単には得られない貴重なスキルを多数持ち合わせている橋本さんを、日本企業は受け入れないのだろうか。
日本社会に還元する
海外でのキャリアをきちんと評価し、日本社会に還元する仕組みづくりが急務だろう。
日本で働いていた小学校の教員を辞め、タイで日本語教師として働く女性は最後に、こう語ってくれた。
「働くのであれば、私は海外のほうがいいですが、消費者としてサービスを受ける立場であれば、圧倒的に日本のほうがいいです(笑)。明らかに生活環境はいいので、日本で暮らすに越したことはありません。でも、それを超えるくらい『海外で働きたい』という思いがあるからこそ、今も海を渡って異国で働いているのです」
(編集者/ライター・千駄木雄大)
※AERA 2024年10月14日号より抜粋