師岡弁護士は、川崎市の条例は「日本ではじめて差別を刑事規制した画期的な条例で、条例制定以降、明白に禁止規定にあたる露骨なヘイトスピーチは行われなくなり効果があることが証明された」と評しこう続ける。
「国が差別禁止法を作るべきなのはもちろんですが、条約上、国のみならず、地方自治体にも差別を禁止し終了させる義務があります。住民の尊厳と安全を守るためにも、国の動きを待つのではなく、率先して差別禁止条例をつくるべきです」
「対話が重要」
蕨市と川口市を中心に活動するクルド人の支援団体「在日クルド人と共に」代表理事の温井立央(たつひろ)さんは、ヘイトを絶つには「対話が重要」と訴える。
「ヘイト行為をする人たちは、ネット上の一方的な情報だけで攻撃をしてきます。しかし、対話をすれば理解は進みます」
掲げるのが「共生」だ。
その一環で、温井さんたちは毎週、蕨市内で日本語教室を開いている。そこでは、日本人のボランティアスタッフがクルド人に日本語を教える。さらに、クルド人の写真展やシンポジウムなどで、理解を訴える。
「お互い違う文化なので、理解し合うにはある程度時間もかかります。しかし、交流する場所や機会が増えれば違ってきます。それを諦めずに継続していくことが大事。それは、日本人だけでなくクルド人にとっても必要なことです」(温井さん)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年10月14日号より抜粋