AERA 2024年10月14日号より
AERA 2024年10月14日号より

 新幹線未整備の地域からは待望論も渦巻く。70年公布の全国新幹線鉄道整備法に基づいて基本計画として告示されているものの、整備計画が定まらず着工されていない新幹線が全国に10路線ある。特に「空白地帯」の四国では新幹線開通が悲願だ。波床教授は続ける。

「四国の鉄道は明治・大正期の設備を改修しながら使っていて、大規模なインフラ投資は遠からず必要です。産業振興を考えると、新幹線整備が『スタートライン』になる現状もある。四国新幹線の整備費用は1兆~2兆円と見積もられますが、長期的な投資と考えれば回収可能です。基本計画にある路線すべてを整備すべきとは思いませんが、四国をはじめいくつかの地域は十分に検討に値すると思います」

 そして実現までに課題は多いものの、リニア中央新幹線の構想も進む。2030年代には品川-名古屋が40分、やがては品川-新大阪が67分で結ばれるかもしれない。

「リニアを含めた新幹線網がさらに発達すれば、より重要になるのがアクセス交通です。品川-名古屋が40分でも都内移動に1時間かかれば利便性が半減します。拠点間を結ぶ高速通勤列車のような路線を整備できるか。将来的には貨物輸送など新たな取り組みも必要でしょう。ダイヤが過密な東海道新幹線では本格的な貨物新幹線は難しいかもしれませんが、余裕のある路線も少なくない。ドライバー不足など社会課題の解決策になる可能性もあります」(波床教授)

(編集部・川口穣)

AERA 2024年10月14日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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