AERA 2024年10月14日号より

 参加者は企業の総務担当者が主。どの企業にも共通する悩みの種が、他地域と比べて高騰ぶりが突出している都内への出張だ。先に紹介したように日帰り出張に切り替えるケースのほか、新幹線の利用に便利な東京駅や品川駅近くのビジネスホテルが急騰したため、都心から離れたエリアでホテルを探す会社も多いという。また、シティーホテルはビジネスホテルへ、ビジネスホテルはカプセルホテルへといった具合に社員の役職に応じてホテルのグレードを変更する会社も増えている。

 ただ、こうした一時しのぎの対応では限界がある、と山崎さんは言う。

 「円高の影響で少し下がる可能性はありますが、都内のホテルは今後も高止まりが予想されるため、東京出張が外せない企業は社内の出張旅費規定の見直しがマストです」

宿泊費の上限アップを

 見直しにあたっては企業が留意すべき三つのポイントがあるという。

 一つは「宿泊費の上限設定の見直し」だ。同社が対応したケースでは、出張旅費規定の宿泊費の上限は一般社員だと、「8000~9000円台」がボリュームゾーン。東京出張の場合、他地域と区分し、少し高めに「1万円」に上限額を設定している会社もあるが、今はこの枠内で泊まれる都内のビジネスホテルはほぼないのが現状だ。

 「少なくとも社内規定を数千円アップし、東京の場合、1万3000~5000円の水準に見直す必要はあると思います」(山崎さん)

 二つ目が「エリアによって上限額を区分する」措置。ホテルの宿泊価格の高騰は主要都市でも温度差がある。このため企業側の相談で多いのが、「地域によってホテルの価格帯が異なり上限額の設定が難しい」という声だ。例えば、東京以外で高騰が目立つのは、インバウンドの影響が顕著な京都だという。

 「宿泊費の基準は全国一律ではなく、出張先によって上限額の設定に幅をもたせた方がよいと思います。少なくとも、東京と京都は別途上限枠を設けたほうがいいでしょう」(同)

 ただ、ホテルの価格帯は常に変動しているのが実情。天候や時期、交通機関の状況などさまざまな要素を加味して弾力的に価格を変える「ダイナミックプライシング」を導入するホテルは今後、地方でも増えることが見込まれる。そこで必要なのが、3点目となる「宿泊費上限枠の見直しの柔軟化」だ。山崎さんはこう強調する。

 「コロナ禍前までは社内の出張旅費規定は頻繁に変えるものではない、というのが常識でしたが、これからは毎年柔軟に見直しを検討していくことが必要です」

(編集部・渡辺豪) 

AERA 2024年10月14日号より抜粋

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