AERA 2024年9月30日号より

 先進各国の中でもジェンダーギャップが顕著な日本。親会社である日本本社における女性活躍推進の取り組みについては8割近くの企業が「行っている」と回答したが、女性駐在員の派遣の有無との相関関係は見られなかったという。海外拠点内でも女性活躍推進の取り組みを行っている企業は41%にとどまった。

 では、どうすれば女性の海外駐在員を増やせるのか。ヒントは小林さんが個別に聞き取りを行った、海外赴任中の女性駐在員に対するインタビューの中にあるという。

 「ポイントは『本人の強い意志』と『家族の理解・協力』です。この二つによって女性の海外駐在が実現しているのが現状です」(小林さん)

 インタビューに応じた女性たちは、いずれも海外駐在以前に海外留学や海外就職など自発的な海外経験を積んでおり、「本人の強い意志」で海外駐在の機会を獲得していた。小林さんは「留学や海外就職など、自発的に海外に渡る人の割合は男性に比べて女性のほうが高い」と指摘する。だからこそ、海外駐在員として派遣され、活躍できる潜在能力やモチベーションは女性が男性に劣るとは考えにくい。その上で、とりわけ既婚女性にとって重要なのは「家族の理解・協力」を得ることだという。

 誤解がないよう補足すれば、共働きが一般化する中、既婚者の海外赴任は男女を問わず、「家族の理解・協力」を得るのは必須で、かつ難しくなっている。とはいえ、既婚男性が赴任する場合、妻が主婦として帯同するケースは依然として少なくない。一方、既婚女性が赴任する場合、夫の帯同については仕事(勤務先)との兼ね合いで困難なケースが多い。つまり女性の場合、単身赴任が前提になる割合が高くなるため、「行きたくても断る」ケースが多くなりやすい、というわけだ。

 だが、夫が妻の海外赴任に帯同するケースも増えつつある。この「駐在夫」制度について小林さんは「男性の育児休暇が一般に広まってきたように、今後導入が進む可能性がある」と期待を込める。ただ、ここでも海外駐在の任期がネックになる可能性がある、という。

 「海外駐在の任期は育休に比べて長く、それだけの期間、キャリアを中断することを許容する企業は現時点では少ないため、駐在夫は育児休暇よりも普及には時間を要すると思われます」(同)

 学童期の子どもがいる場合、子どもを日本に残して妻が海外に単身赴任することには、夫が単身赴任するケースに比べて家族や社会的な理解を得るのが難しい現実も否定できない。結果的に、既婚女性は夫を伴わず、子連れで海外赴任するケースが多くなるが、そうなるとカギになるのが赴任先での子育て環境の整備だという。

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帯同する側の意識改革も求められている