海外駐在員の確保が困難となっている現在、女性駐在員の起用促進はその一助になる。そんな女性駐在員の現状と抱える課題について専門家に聞いた。AERA2024年9月30日号より。
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日本企業の海外事業で女性起用はどれくらい進んでいるのか。
世界115カ国で人材紹介事業を展開するJACリクルートメント(東京都千代田区)が日系海外子会社221社を対象に昨年実施した調査によると、駐在員として赴任する女性が「1人以上いる」と回答した企業は19%だった。
海外駐在員に女性を起用する企業が限定的な要因について、調査を担当した同社の小林美紗さんは「赴任先の治安など安全上の配慮と、ライフイベントとの兼ね合い」といった課題を挙げる。
「女性の場合、海外赴任を希望していても結婚や出産といったライフイベントとの兼ね合いで躊躇せざるを得ない人が少なくありません」
企業の海外駐在の任期は通常3~5年。これが1~2年ぐらいの任期で、よりキャリアの浅い段階で赴任できるチャンスがあれば、女性がもっと手を挙げやすくなるのでは、と小林さんは提案する。任期の短縮や若手の登用は、性別にかかわらず企業側に求められる改革の一つだろう。
というのも、近年は男女を問わず、海外駐在員の確保が困難と感じている企業が増えているからだ。課題を問う同社の調査でも「海外駐在に適した資質を持つ人が少ない」(26%)と「社内に海外駐在希望者が少ない」(25%)が上位を占めた。こうした結果を踏まえ、小林さんは「意欲と能力のある女性が海外駐在しやすい環境を整備することが、海外駐在員の不足を補う一助になる」と訴える。
ただ、企業の多くは積極的に女性起用を促進しているとは言い難いのが実情だ。
海外駐在員に関する取り組みについては「海外駐在派遣者のローテーションを活性化させていく」(19%)、「海外駐在派遣人数を増やしていく予定」(13%)、「若手や女性の海外駐在員を積極的に増やしていく予定」「海外駐在派遣要員に対する研修を強化していく」(いずれも9%)といずれも限定的。一方で、海外駐在員の派遣に対して「現状と方針を変える予定はない」と回答した企業は約3割。「海外駐在派遣人数を減らしていく予定」との回答も14%あった。