中村千晶
1995年、パリ郊外。アルジェリア系のザイア（ウーヤラ・アマムラ）は双子の妹フェットゥマとパリの音楽院に編入する。だが指揮者を目指すザイアの前に性別や格差の差別が立ちはだかる。そんなとき世界的指揮者が特別授業にやってきて──。現在も活躍を続ける実在の姉妹を描いた映画「パリのちいさなオーケストラ」。脚本も務めたマリー＝カスティーユ・マンシヨン＝シャール監督に本作の見どころを聞いた。
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私はいつも実話にインスパイアされてそれをフィクションに変換して物語を伝えることが好きです。こんなにすごいことが本当にあったのだ！と知るとそれを見た人が触発されて希望や生き抜く力をもらうことができると思うからです。
ザイアと双子の妹・フェットゥマに会い、彼女たちの物語に惹きつけられました。特に若い世代がこの物語を知ればきっと勇気づけられる、自分のやりたいことをやり抜くために必要な「なにか」を感じられるのではと思いました。
アルジェリア系でパリ近郊に暮らす二人はパリの名門音楽院で同級生たちの差別的な目にさらされます。ザイアは「女性に指揮者は無理だ」と言われます。しかしザイアは夢を諦めず音楽院の生徒と移民の多い地域の若者が一緒に演奏する「ディヴェルティメント・オーケストラ」を結成します。
いまも世界中で女性指揮者は全体の6％です。が、大きく変化したこともあります。今年のパリ・オリンピックの閉会式にディヴェルティメント・オーケストラが登場したのです！ 以前なら起こり得ないことでしょう。異なる人々が一緒に演奏をするオーケストラはまさに多様性の鑑です。フランスは公立校でも多様な楽器に触れる機会があり、自分の可能性を発見することができます。まだまだ発展途上ですが目覚ましく改善してもいる。私は人は変われるということに興味を持っているのです。
私には20歳の息子がいて、ちょうど人生について悩んでいます。SNSの影響もあり、いまの若い世代が抱えるプレッシャーはとてつもなく大きいでしょう。そのなかでも必要なのはやはり自分を強く持つこと。やりたいことを諦めずに続ける強さを自分のなかに見つけること。それが人生の支柱であり、糧だと私は思っています。
（取材／文・中村千晶）
※AERA 2024年9月30日号
桶井道（おけいどん）
沖昌之
ラリー遠田
