PTA活動は過渡期にある。改革が進まない背景にはそれを妨げるボス的な保護者、いわゆる「ボスママ」がいることもあるという。よかれと思って働きかけても、時にいじめのような事態も起こりうる。AERA 2024年9月30日号から。
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「書類は毎年同じだし、日付を変えるだけでいいから」
兵庫県姫路市に暮らすミキさん(仮名、40代)は、4年前、そう懇願されて子どもが通う小学校のPTAで書記になった。PTAが配布する文書の内容は毎年ほとんど変わらない。だから、負担も少ない。そういう触れ込みだった。
ところが、実際に書類を作ってみると、先輩役員から再三、やり直しを要求された。
「余白のバランスが美しくない」「ページ番号は中央から1ミリもズレてはダメ」……。
修正するたび、プリントアウトした文書を先輩役員の家のポストに届けねばならない。自宅との間を何回も往復した。
「あまりに理不尽ですよね。いじめかと思いました」
先輩役員は、書記3年目、PTA本部の中では最も役員歴の長い女性で、PTAの中心人物だった。ミキさんの文書に細々ダメ出しをし、上から目線でふるまうさまはさながら「支配者」。ミキさんはこう表現する。
「キリッとした真面目そうな方でした。彼女を中心に、仕事は先輩の背中を見て覚えろ、みたいなおかしな『徒弟制度』がはびこっていた。一言でいうなら、『ボスママ』です」
改革妨げるボスママ
紙ベースの作業が「ボスママ」によるパワハラの温床と感じた。非効率だし、仕組みを変えないと誰かが同じ目にあう。
ミキさんは文書をネット上で見られるようにしたり、議事録の公開を提案した。PTAの活動の透明化も図れると考えた。だが、提案がボスママの逆鱗に触れたらしい。それが、地獄の始まりだった──。
AERA dot.編集部がPTA活動についてアンケートを行ったところ、約550件の回答が寄せられた。PTAにも時代に即した変化が求められるなか、「改革を妨げているものがあるとしたら、何だと思いますか?(複数回答)」という問いに、2位の「PTAのOB・OGの反対」181件を大きく引き離して273件だったのが「ボス的な保護者」、つまりは「ボスママ」の存在だ。