問題意識を持つ仲間と
こうした動きを、京都府在住のテツさん(仮名、50代)は懸念を持って受け止めている。
テツさん自身もPTA活動には問題を感じ、入退会届の整備について、地元の学校長や教育委員会に働きかけてきた。
10年ほど前、娘が通う学童保育所の保護者会の会長を務めていたとき、疑問に思う出来事があった。役員決めの際、ある保護者が「シングルマザーなので、役員はできない」と断った。すると、他の保護者たちから激しく非難され、退所に追い込まれてしまった。
「自治体にも確認しましたが、学童保育所の保護者会は入退会自由ですし、役員の強制はおかしい。入退会届の整備などを、PTAについて問題意識を持つ仲間とともに取り組むようになったんです」(テツさん)
活動の強要「是正したい」
現在、テツさんはPTAに加入していない。2年ほど前から妻が病気になり、27年間続けてきた仕事を辞め、妻の介護をするようになったためだ。
「ぼくの場合も含めて、さまざまな事情を抱えてPTAの役員を引き受けられない保護者がいる。にもかかわらず、くじ引きで無理やり役員を押しつけるなど、活動を強要することがある。それを是正したい」(同)
PTA活動に意義も感じている。この学校のPTAでは、集団登校の付き添い、校門前での子どもたちへのあいさつ、広報紙の作成、卒業記念品の寄贈などを行ってきた。
そこで、テツさんはPTA会費の代わりに「協力金」を支払い、娘はPTA保険の加入などを含めて、会員の子どもと変わらない扱いを受けている。
行き過ぎは誰も納得しない
「PTAをなくしたいという気持ちはありません。目指しているのは、あくまでも話し合いによるPTA活動の適正化です。一部の『アンチPTA』の保護者のやり方は、一般に受け入れられるとは思いません。関係者にも家庭や人権がある。行き過ぎたやり方は誰も納得しない」(同)
強硬なやり方によって、PTAや学校が正当な要求をクレームととらえてしまえば、きちんとした話し合いが行われず、かえってPTA活動の適正化の障害になりかねない。
残念ながら、PTAは一朝一夕では変わらない。まずはPTAの中の人や学校との信頼関係を築き、そのうえで粘り強く働きかけていく必要があるだろう。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)