2040年、日本は働き手の中心となる現役世代(15~64歳)が、今の8割になるとされる「8がけ社会」に突入する。活路を見出すことができるのか。AERA 2024年9月23日号より。
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テクノロジーや外国人材による労働力の確保とともに、「8がけ社会」の突破口となるのは発想の転換だ。
例えば海外からの視点。日本にずっと住んでいると、社会の良さも当たり前になる。そんな中で、米紙ニューヨーク・タイムズの「2023年に行くべき52カ所」の特集記事で盛岡市が脚光を浴びた。
推薦した米国人作家のクレイグ・モドさんは「日々の暮らしの中に残すべき価値を見つける。そんな気づきを縮みゆく日本中の街に与えたかった」と語る。
「人手不足はこれまでの常識を見つめ直す機会になる」と指摘するのは、労働問題に詳しい立教大の首藤若菜教授だ。
便利で安いサービスは、賃金低下や長時間労働から生み出された部分がある。働き手を引きつけるには、適正な賃金と長時間労働の改善が欠かせない。首藤教授は「一般の消費者や社会全体で、本来あるべきコストを負担するという発想が重要だ」と述べる。
行政サービスやインフラの取捨選択が避けられない場面も迫っている。縮小・減少していく「縮減社会」で求められる合意形成を考える研究会を開いてきた金井利之・東京大教授(自治体行政学)は「なぜここを減らすかだけでなく、なぜ他を減らさないのかへの説明も求められる」という考えを示した。
8がけ社会が直面する2040年に主役となるのは今の若者たち。課題は山積みだが、解決に動こうとする人たちは増えている。
起業によって社会課題を解決する「ボーダレス・ジャパン」が主催する社会起業家育成のためのボーダレスアカデミーは、開校5年で卒業生が300人を超えた。その9割が20~40代で、卒業生から100人以上が社会起業家になった。
アカデミー代表の半澤節さんは「課題を自分事と捉え、何とかしたいと動き出す若者が増えている」と語る。大学生や会社勤めの30代、子育てが一段落した主婦など年齢や立場は違うが、生活の延長線上にある課題の解決を目指している。