宇宙空間に暮らす「理想的な」夫婦の秘密を描くAmazon Original映画「不都合な記憶」。主演を務めた伊藤英明さんと、妻を演じた新木優子さん。近い未来を予感させる作品で二人が発見した真実とは──。AERA2024年9月16日号より。
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宇宙空間にある高級レジデンスに暮らす夫婦。理想的なカップルにみえる二人には秘密があった──。Amazon Original映画「不都合な記憶」は東北大学物理学科出身の石川慶監督が、国際的なプロジェクトのもと、圧倒的なスケールで描くSFサスペンスだ。
伊藤英明(以下、伊藤):本作の撮影は全てタイで行われたんです。巨大なスタジオにセットが建てられて、初日に宇宙での生活の様子やテクノロジー設定に関する説明を受けながらセットをツアーでまわりました。宇宙独特のピーンと張り詰めた緊張感や孤独感がセットに見事に表現されていて、それがキャラクターや物語にも反映されていると思います。
新木優子(以下、新木):合成なども加わった完成した作品を観て、「私があのとき生きていたのはこんな空間だったんだ!」と感動しました。多国籍なスタッフと一生懸命にコミュニケーションを取ろうとしたプロセスなども、全てが作品につながった気がします。
伊藤:ある意味、宇宙に似ていたよね。
新木:はい、ちょっと宇宙に来たような気持ちでした。
逆に人間らしさ大切に
伊藤さん演じるナオキは天才科学者で、新木さん演じる妻マユミは実はアンドロイド。ナオキはある理由から愛する妻を「作り替えている」のだ。
伊藤:本作で感じたことは「人間の感情って怖い」につきます。ナオキはマユミを自分の望むアンドロイドにしてしまう。あれだけのテクノロジーがあればあんなことをしなくても自分の脳を満足させることはできるだろうに、自分ではなく、相手を変えようとする。サイコパスな面のある役柄ですが、こうした執着心や嫉妬心は誰もが持っているものだと思うんです。場所が宇宙になっても時代が変わっても人間の心は変わらないのだ、と思わされました。
新木:マユミははじめ自分がアンドロイドだということに気づいていないんです。基本的には普段通り、逆に人間らしさを大切に演じていました。ただ「記憶」については人間と違う。人はいい思い出も嫌な記憶も思い出したりできますよね。でも、アンドロイドにはそれができないから、覚えていたい記憶が欠落してしまう。その違和感を表現できたらと思いながら演じました。