やっぱり家が高すぎて――。単身者にとっての状況もまた厳しい。高騰する住宅価格に悩む現代人を追う連載の5回目は、単身者が家を買うという選択肢と知っておくべきことについて。
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都内6千万円強を44歳で購入
都内で会社員として働くC子さん(46)は、2年前、杉並区に中古マンションを購入した。2LDKで55平米、築5年の築浅マンションで、価格は6千万円強。
それまでは家賃15万円の渋谷区の賃貸マンションに1人で暮らしていた。物件は気に入っていたが、40歳を過ぎて、このまま家賃を払い続けながら賃貸に住むことに不安を覚えるようになったことが大きかった。
36歳で恋人と別れてから、パートナーはいない。大学入学とともに1人暮らしを始めたから、実家で家族と暮らした期間より1人で暮らす期間のほうがはるかに長い。
「良い出会いがあれば、結婚するのもあり」とは思っているが、誰に気をつかうこともない一人暮らしの自由も身に染みついている。「別にこのまま独身でいるのも悪くない」と思う。
老後のためにもそろそろ家を
40代になってから、ぼんやりと「60歳まであと20年なんだ」と考えるようになった。20歳からの20年を考えると、時が過ぎるのはあっという間だ。「老後のためにもそろそろ家は買ったほうがいいかもしれない」と考えるのは、自然な流れだった。
社会人になってずっと都心に暮らしてきたし、通勤の便もあるから、なるべく都心近くで暮らしたい。コロナ禍も挟み、内見を繰り返すようになって2〜3年。購入したマンションは、価格と立地が何とか折り合いのついた物件だった。近くに大学があり、もし今後、状況が変わって引っ越しを考えたときもそれなりに需要があると考えた。
「1人でマンションを買うのは勇気も必要だったけれど、これからの時代は単身者がもっと増えると聞くし、いざというときには売ったり貸したりできるかな、と。終の住み家になるかはわからないけれど、住まいを買うことで老後の不安は少し減ったと思っています」(C子さん)
C子さんは定年まで働き方を変えずに今の仕事を続けるつもりだ。
単身世帯は増加
世帯の単独化が加速している。2050年には、全世帯に占める一人暮らしの割合が44.3%に達する見通しだ(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」)。同推計によれば、9年後の2033年には、全世帯の平均人数が初めて2人を割り込むと見られる。