さて、「ハングリー精神の新たな意味」を体現する起業家リーダーたちが上場を果たす時代、いかにしてメンバーから「やらされ感」を払拭し、「関わった感」を醸成するかを次に考えていくことにしましょう。

 新たなハングリー精神に応えるリーダーに触発されて動き出すのは、若い世代だけではありません。

「日本で最初に婚活のIT化を実現した会社」として有名な株式会社IBJ(本社 東京都)は、かつての「近所の仲人おばさん」にITツールを提供し、大成功した会社です。

●メンバーの喜びを「見える化・実感化」する

 仲人おばさんといえば、顔が広くて、たくさんの人とのネットワークを持ち、結婚適齢期のご子息・お嬢様がいるところに出入りしては、お見合いの斡旋をする存在です。

 そこに目をつけてIBJを創業した代表取締役社長の石坂茂さんは、仲人さんたちがさらにネットワークを広げられるよう、「結婚したい人たちのデータベース」を提供しました。全国の仲人さんの知恵を借り、使いやすさにこだわったツールを開発したことで、「仲人おばさん」の仲介による婚約率が一気に高まりました。

 もちろん、データベースという道具だけでは不十分です。IBJでは、地域ごとに仲人さんが集まる会を定期開催したり、仲人さんにさまざまなアドバイスをするコーディネータを派遣したりと、さまざまなサポートをしています。

 兎にも角にも、仲人さんの成功の鍵は、コミュニケーションです。IBJでは、先輩仲人さんの知恵をもとに、コミュケーション力の磨き方のテキストをつくるなど、これから結婚カウンセラーを目指そうとする人たちの養成もしています。

 そこに興味を持って集まるのは、若者だけではなく、年配の方も多いとのこと。年齢を問わず、働くことの最大の喜びは、人の役に立つこと、人に喜んでもらうことです。これまで地域で仲人役をしてきた、人のお世話をするのが大好きな年配の方々に、さらに生き生きと働くチャンスをIBJは提供しているのです。

 分業のしっかりした大きな組織に入ってしまうと、こうした喜びを実感する機会が少なくなりがちです。メンバーが感じるべき喜びを、いかに見える化・実感化するかも、リーダーが考えるべきことなのです。

藤沢久美(ふじさわ・くみ)
シンクタンク・ソフィアバンク代表
大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年、代表に就任。そのほか、静岡銀行、豊田通商などの企業の社外取締役、文部科学省参与、各種省庁審議会の委員などを務める。
2007年、ダボス会議(世界経済フォーラム主宰)「ヤング・グローバル・リーダー」、翌年には「グローバル・アジェンダ・カウンシル」メンバーに選出され、世界の首脳・経営者とも交流する機会を得ている。
テレビ番組「21世紀ビジネス塾」(NHK教育)キャスターを経験後、ネットラジオ「藤沢久美の社長Talk」パーソナリティとして、15年以上にわたり1000人を超えるトップリーダーに取材。大手からベンチャーまで、成長企業のリーダーたちに学ぶ「リーダー観察」をライフワークとしている。
著書に『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』(実業之日本社)、『なぜ、御用聞きビジネスが伸びているのか』(ダイヤモンド社)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/kumi.fujisawa.official

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