ストレスを感じたときに行う意図的な行動を「コーピング」という。その方法が多いほど、ストレスを上手に和らげることができるといわれている(写真:写真映像部・和仁貢介)
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 疲れが取れないのに、頑張りすぎていないだろうか。疲労で心身が参ってしまったら「逃げる」という選択もありだという。AERA 2024年9月9日号の「最強の回復法」特集より。

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 疲労回復のための「能動的な休養」は大切だが、心身の疲れが限界値を超えそうなとき、あえて後ろ向きの「逃げる」選択肢もある、と指摘する人もいる。

 体やまぶたが重い。頭に白いモヤがかかっている。うつまではいかないけど、「今ここにいる」という感じがしない。重力が5倍になったように感じる──。こうした症状について、『心療内科医が教える本当の休み方』の著者で医師の鈴木裕介さんは「体が店じまいの合図を出しています」と話す。

 いつ逃げるべきかは、人や事情による。ただ、冒頭のような状態が、2週間以上、慢性的に続けば、活動性を下げることを考えた方がいいという。

「本来はアクセルがかかる場面でかからないことが長らく続いているなら、カフェインなどをとって無理やり頑張る時期ではないかもしれません」

 意欲がわかなくて、動けない。そんな時は──。

「体の声に従って動かないでください。体が欲する逃げ方をするのが一つの手です」

 あの人に会ったら楽しいかもしれないけど、かえって疲れるかも……。

「ストレスに対処するための行動を『コーピング』といい、さまざまな方法がありますが、落ちているときは、より『低コスト』なものを選ぶのが原則です」

 そもそも人と会ってお茶をするのは、高コストなコーピングだ。気持ちが落ちているときに「最近どう?」と聞かれたら、ジャッジされるようで頭が痛くなることも。

休みは自分の身を守る

 回復のプロセスは人それぞれ。

「休んでいるときは光を浴びましょうとか、タンパク質をとりましょうと言われますが、それすらも『やらなきゃいけない』と負担に感じる人もいます。これらを行うことすらままならないのは、それほど落ちている、ということに他なりません」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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休みは自分の身を守り、回復するための必要な時期