「攻めの休養」の大切さを説く日本リカバリー協会の片野秀樹さんも、疲労で心身が参ってしまったとき、その原因であるストレスから「いったん離れる」こと、「疲れたら逃げてもいい」というマインドを持つことは、必要なことだと話す。

「そのとき大事なのは、『疲労と、疲労感は違う』ということをきちんと理解することです」

 疲労感とは、疲労が存在することを自覚する感覚。しかし、ときに私たちは疲労があるにもかかわらず、疲労感を一時的にマスキング(上から覆い隠すこと)できてしまうのだ。

「動物は疲労と疲労感を必ず一致させています。疲労で動けない状態なのに動くと捕食されてしまうから。でも脳が発達した私たち人間は、仕事への使命感、褒賞への期待、がんばっている自分に酔ってしまう──などで、一時的に疲労感を忘れてがんばれてしまう。問題は、このマスキングを恒常的に繰り返してしまうことです」(片野さん)

 いわば疲労と疲労感が「乖離(かいり)」することで、少し休んだ程度では回復しなくなり、疲労の負債化が始まる。これが非常に危険だと、片野さんは言う。

「ストレスからのデタッチメント(分離)の方法を何らかとり、疲労と疲労感が乖離した状態をいったん、元に戻す。慢性的で致命的な疲労につながらないためにも、重要なポイントです」

(編集部・小長光哲郎、井上有紀子)

AERA 2024年9月9日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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