学校や仕事、生活での悩みや疑問。廣津留さんならどう考える?(撮影/吉松伸太郎)
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小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(31)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA dot.連載。今回は、大学の成績評価に関する60代教員からの疑問に答えてくれた。

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Q. ハーバード大ではどのように成績評価がされていたのでしょうか?

A. 授業によりますが、成績の約2〜3割が出席点、残り7割はペーパーテストの点数やエッセーなどの評価で決まりました。評価方法は先生や授業によって変わってくるのですが、共通しているのは出席点はただ授業に出ているだけではつかないこと。“attend”だけはなくて“participate”、つまり 発言をして授業に”参加“していないと、出席点(参加点)には加算されないんです。先生は授業中に誰が発言したか、グループプロジェクトのときに誰がリードしているかをちゃんとチェックしているんですよね。

 成績評価は、A〜Fの評価に対してポイントがつけられる「GPA(Grade Point Average)方式」と、合格・不合格だけを判定する「Pass/Fail方式」の2つが選べるようになっていました。履修登録をする際に、学生が各授業について希望する成績評価方式を選ぶんです。Pass /Failは限られた科目にしか適用できませんが、成績に対するプレッシャーを軽減できるので、ちょっと興味があるとか、知見を増やしたいといった授業を履修するときに活用するイメージ。ただ、テストでいい点数を取ってもGPAには換算されず、就職の際など対外的には趣味で履修した科目と思われがちなこともあって、Pass /Failを選ぶ学生は私を含めてあまりいませんでした。

 ペーパーテストは範囲も広く準備が大変で、かなりプレッシャーがかかりました。そういえば、在学中の期末テストの時期に大学に爆破予告が来た事件があったんです。当日キャンセルされたテストもあれば予定通り実施されるテストもあり、事態は混乱。頑張って勉強してきた学生たちのために、大学からは特別措置として、通常は途中で変えられない成績評価方式をPass /Failに変更できるオプションが提示されたんですよね。爆破予告が不安で勉強に集中できなかったり、テストで実力が発揮できなかったりするので、そこを配慮した対応はフェアだなと思いました。私自身はどっちを選んだのか、すっかり忘れてしまいましたが……。

 結局、爆破は起きなかったのですが、後日爆破予告の犯人はハーバード生だったらしいと聞きました。決して許されないことですが、ただ、今考えてもテストのプレッシャーは半端ではなかったなとは思います。日々の課題も膨大な量でしたし、必要科目を履修して卒業することが本当に大変でした。

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廣津留さんは日本の大学でどんな授業をしている?