葛西紀明さん(52)(かさい・のりあき)/2014年のソチ五輪で個人ラージヒル銀、団体銅メダルを獲得。現在は所属チームの監督兼選手。
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 年齢を重ねるとだんだん無理が利かなくなってくる。それでも活躍し続け人は、どのように自分と向き合っているのか。スキージャンプ選手・葛西紀明さんに聞いた。AERA 2024年9月9日号の「最強の回復法」特集より。

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 スキージャンプの「レジェンド」と言われる葛西紀明さん。52歳の今も現役で活躍している。そんな葛西さんの疲労回復術は「何はさておき、睡眠」だ。

「睡眠に関してはすべてをパーフェクトに備えたいと、いつも思っています」

 まずは眠る環境。夏は23~24度くらい、冬は20度を切るくらいの「寒めの設定」にしている。

北海道北部の下川町という極寒の地で育ったからか、暑いと眠れないんです。遠征先のホテルではエアコンの温度設定はもちろん、音が眠りを妨げないように微風に設定したり、細かく気を配ります」

 マットや枕など寝具一式もスポンサー企業から提供してもらったものを、遠征や合宿先にも持ち運んで使っている。

「寝間着もおなかと腰に磁気が入ったリカバリーウェアです」

 30代までは7、8時間は睡眠をとっていたという葛西さん。40代頃から急にショートスリーパーになったのだという。

「4、5時間眠ったら、もう眠れない。自分でもびっくりの変化でした。ただ不思議なことに疲れはしっかりとれているので、まったく問題はないですね」

 次に工夫しているのは入浴。キーワードは「交代浴」だ。

「まず42、43度くらいの熱めのお湯につかり、汗が出てきたらあがって冷たいシャワーを足の方からかけていく。これを3回繰り返すんです」

ワインでストレス軽減

 きっかけは2014年のソチオリンピック。交代浴を最初に試し、「これはいい」とピンときたのだという。

「おかげで銀メダルと銅メダルを獲得できた。僕にとって疲労回復につながる大事な習慣です」

 お風呂からあがって寝るまでに、赤ワインをグラス1~2杯ほど飲むこともある。

「睡眠の助けになるし、頭の中にたまったストレスを軽減する効果もあると感じています」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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