寝具を手に遠征に出発するところ(写真:本人提供)

 40代を前にした頃、葛西さんは自身の「脳の疲れ」を自覚する。「体は疲れてないのに、何となく疲れて」いたからだ。

「スキージャンプは一瞬の競技時間の中で、風を見つつどう飛べばいいかなど、脳をフル回転させているんです。5本、10本飛んだら頭がすごく疲れる。『疲れの正体は脳だったのか』とあるとき気づいたんです」

 そんな脳の疲れをとるために大事なのが、「切り替え」だ。

「ジャンプ台を降りたら、もう一切、競技のことは考えない。どこかに買い物に行こうか、何か美味しいものを食べようか、など『自分の好きなこと、楽しいこと』に頭を切り替えて、脳の疲れをとるようにしています」

 食事に関しても「切り替え」が大事だ。1年の8割ほどは「減量に気を付けないと」が頭にある日々。どうしても食事は野菜や果物が中心になる。

「ただその分、減量を気にする必要のない時期は、大好きなトンカツや、白いご飯を3、4杯、思い切り食べます。我慢するばかりではストレスがたまり、疲労回復できないですから」

 記者も50代。最近は「疲れた」を連発する毎日。そう愚痴ると、レジェンドはこう言った。

「僕は『疲れた』とは絶対に口にしないし、『疲れたでしょ?』と言われても『いや、疲れてないですよ』と必ず返します。疲れてしまう前に『温泉行こう』などと自分で気持ちを切り替え、自分で行動に移し、自分で疲れをしっかりとる。その姿勢が大事ではないかと思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年9月9日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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