『Chandelier』について、浅田は「苦悩を表現しています」と説明した。
「自分自身もスケーターとしてこれまでショーで滑ってきているんですけど、やはり滑っていく中でも、楽しいとか幸せだけじゃなくて、やっぱりどこか大変だったり辛いこともあるので。それを表現しつつ『でも私は負けずに輝くんだ』という、そういった力強い滑りを皆さんに観ていただきたいなというふうに思います」
浅田は自らがプロデュースするアイスショーで、スケーターやスタッフと固い信頼関係を築き、見事なエンターテインメントを披露し続けている。しかし、座長、そしてプロスケーターとしての責務を高いレベルで全うし続ける上では、浅田自身にしか分からない苦悩があるのだろう。
苦悩を表現しつつ、それでも『Chandelier』の浅田には強い信念が感じられた。Siaも現在は依存症を克服し、顔を出して公の場に登場することもあるという。アーティストとして深いところでSiaに共感する浅田の思いが結実した、稀有なプログラムだった。
浅田は荒川と、バックヤードで「ずっとしゃべってますね」と楽しそうに明かしている。
「人生のいろんなことを教えてもらってます」
浅田にとり、今回が18回目となる「フレンズオンアイス」をプロデュースし続ける荒川から学ぶことは多いのかもしれない。先輩のプロデュースにより、心境を吐露するプログラムを演じる「フレンズオンアイス」は、浅田にとり貴重な経験となっているようだ。(文・沢田聡子)
沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。フィギュアスケート、アーティスティックスイミング、アイスホッケー等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。2022年北京五輪を現地取材。Yahoo!ニュース エキスパート「競技場の片隅から」