学校側は医師に「来ていただいた」
だが、もしも懸念や意見があったとしても、学校側が学校医に対して意見することは、「ハードルが高い」と渡辺理事は指摘する。
学校医は地元の医師会が推薦した医師が務めることが多い。学校には医師に対して、「診療の合間に無理して来てもらっている」という意識があるという。
小児科・循環器内科が専門の渡辺理事は広島県呉市で20年以上、学校医を務めてきた。
学校健診は短い時間で多くの子どもたちをみなければならない。
「子どもたちの診察時間をできるだけ長くしたい、という気持ちがあった」が、初めて学校健診のため学校に行った際には校長室に通され、茶がふるまわれた。
「学校からすれば、『来ていただいた』という感覚だったと思います。医師の健診のやり方が気になっても、学校側から言い出すのはとても難しいと思います」(渡辺理事、以下同)
「原則着衣」の誤解とリスク
また、健診時の「脱衣」の問題は、「大昔からあった」。
記者の子ども時代も、脱いで自分の順番がくるまで待機したが、自分の裸が同級生を含めて人の目にさらされることは恥ずかしいと感じた児童が大勢いたように思う。第二次性徴がはじまっていればなおさらだ。
脱衣について、文科省は2年ほど前、日本医師会に相談し、対応のための文書を出すことを協議してきた。検査・診察時の服装について、「正確な検査・診察に支障のない範囲で、原則、体操服や下着等の着衣、又はタオル等により身体を覆い、児童生徒等のプライバシーや心情に配慮する」こととし、先の通知が出された。
しかし、学校健診における「着衣」という表現が誤解を生むのではないか」と、渡辺理事は懸念した。その懸念は現実になった。文科省の通知について、新聞などが「学校健診は『原則着衣』で」と報道したのだ。
渡辺理事はすぐに記者会見を開き、「着衣」はあくまで「正確な検査・診察に支障のない範囲」であり、学校健診の11の検査項目のうち、服装が健診の範囲や精度に影響する項目が3つあることを説明した。