とはいえ、命名権の売却自体はドームにとって大きなプラスとなるが、根本的なことは変わっていない。
「重要なのはドームの稼働率を高め収益を上げること。命名権が売れても年間70試合以上を使用するNPB球団がいなくなったのは変わらない。稼働日数減少が損益に直接影響しているのは明らで、そこを改善していかなければならないのは以前と同じ状況」(在京テレビ局スポーツ担当者)
日本ハムがドームを使用していた2022年度のイベント開催日数は124日だったが、エスコンに移転後の2023年度は98日に減少。2024年3月期の最終(当期)損益は過去最悪の6億5100万円の赤字で、売上高は2001年度の開業以来最低の12億7100万円にとどまった。
「ドームで他球団が試合を開催するには北海道を保護地域とする日本ハムの許可が必要。しかし今までの経緯を考えても本拠地移転が軌道に乗り、多大な利益を出すまでは(日本ハムが他球団にドームでの試合開催を許可するとは)考えにくい。そうなるとコンサドーレを中心にラグビーなど、他のイベントの日数を増やすしかない」(スポーツ紙プロ野球担当デスク)
現在はサッカーJ1・北海道コンサドーレ札幌が本拠地として使用して年間25試合程度。さらに高校野球や高校サッカー、ラグビーの誘致なども話題になっている。昨年は全国高等学校サッカー選手権大会の北海道大会決勝が開催され、4500人の観客が訪れて盛り上がったという。
徐々にドームの使用も増えていきそうな雰囲気もあるが、やはりプロ野球のチームが抜けたことの穴を埋めるのはそう簡単ではない。使用頻度を増やすためにドーム内を半分に区切って使用する新モードも利用希望者が少ない状況が続いている。
札幌市の秋元克広市長も「収支改善につながっていく1つの手段として非常に大きな意味を持っていると思っています」と命名権が売れたことを前向きにとらえつつも、「新たなコンサートの誘致だとか見通しの甘さを指摘されてもしっかり受け止めなければいけない」といまだ厳しい状況であるとコメント。市も日本ハムが移転後の試算として当初出していた5年間での黒字化も困難として収支計画の見直しを発表している。