マクドナルドのAIによる公告動画から

 あの時、未来を描くはずの学問の学会が、引くほどの古典的な女性観であることに世間は驚いたのだった。人工知能学会は差別的意図はないことをすぐにアピールし、その次の号では自ら表紙問題について批判的な論考を掲載しているが、結局2014年の「ほうきを持つ女性型ロボット」炎上時から、2024年の「マクドナルドAI美少女」炎上まで、根底にある問題はほぼ解決されていないことを実感する。いやむしろ、以前よりずっと露骨に“この手”の問題が迫ってきているのかもしれない。

 AIは現実を反映する。現実社会に差別があるようにAIも差別する。たとえば今実際に行われている顔認証では、圧倒的に白人男性での精度が高く、女性や非白人系人種での精度が低いと言われている。また2017年、アマゾンはAIツールを使った採用プロジェクトを中止した。AIが“採用すべき人材”として学習した履歴書の大半が男性のものだったことから、実際の採用で女性に不利になったからだ。

 AIには差別が何かはわからない。AIは文脈で差別を解釈できない。だからこそ、性別間や人種間の公平性を担保するためには、データサイエンスにフェミニズムが必要になるのだと言われている。

 日本企業でデータサイエンス系の研究職に就く女性は全体の1割程度である。そういうなかでAI生成物には、研究者たちのジェンダー観が、明確な意図もなく反映されてしまうだろう。ちなみにAIモデルの男女比は、日本だけでなく世界的にも圧倒的に若い女性が多い。

「性の商品化」をフェミニズムは批判してきた。「性」というのは行為としてのセックスだけでなく、「女性ジェンダー」そのものも商品となる。「身体」も商品となる。「イメージ」も商品となる。女の身体、ジェンダー、セックス、生殖能力から全てが切り売りされている状況で、それらの情報を集めて「完璧な女性」というのが今後どんどん登場していくのだろう。性の商品化は加速することで、私たちのジェンダーをより厳しく縛ってしまうかもしれない。高度な技術が平等で公平な社会を導くというわけではない。

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AIはジェンダー感をどう変えていくのか