AIは社会を映す鏡(写真はイメージ/gettyimages)
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。AIとフェミニズムについて。

【写真】マクドナルドのCMに現れるAI美少女たちはこちら

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 マクドナルドの広告が炎上した。

 生成AIを活用したもので、様々なタイプの美少女がポテトを持つ短い動画だ。まさに様々なタイプの美少女が次々に登場する。

 未来的な世界で疾走感ある金髪美少女、桜の下を満面の笑みで歩くセーラー服姿の美少女高校生、宇宙船内(?)でクールに構える美少女、歌舞伎町的ゲームセンターで身体をしならせる美少女、ビルの屋上で太陽を背景に風に髪をなびかせ笑う白いワンピース姿の美少女、ごつい車の中にいるストリート系美少女、肌の露出度の高い戦闘服姿の美少女、地下アイドルっぽい美少女、学生っぽいラフなスタイルの美少女、あとは、なんだか全てを足した感じの一般女子っぽい世界観をもつ超美少女。

 そして……見事にポテトには、全く目がいかない。美少女にしか目がいかない。というか美少女の完成度に比べポテトの精度が悪すぎて、プラスチック感しかない(不味そうです)。美少女は生成できたが、商品(しかも食品)を際立たせる広告としては、明らかに失敗だったのではないか。

 とはいえ、これ、きっとAIの課題を考えるよい機会になるのだろう。

 AIの大きな課題、AIとフェミニズム、である。

 ちょうど10年前、「人工知能学会」が出版する学会誌の表紙が炎上したことがある。人工知能の表象として描かれたイラストが、「女性差別だ」とSNSで話題になったのだ。  

 覚えている人も多いと思うが、それは掃除しながら本を読む女(同時には無理よ)、であった。水彩画調で描かれた、“ご主人”の書斎を掃除中の女性型ロボットだ。“彼女”は、質素で中途半端な長さ(ふくらはぎ丈)のワンピースを着ている。ワンピースの胸のボタンは一番上までしっかり留められていて、大きな胸の膨らみが強調されている。“彼女”は片手に本を持ち、片手にほうきの柄を持っている。“彼女”の背中には、太いケーブルが挿されている。“彼女”の顔はとてもとても従順である。

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根底にある問題10年変わらず