石破 茂(67)元幹事長

 自民党としては、新総裁・首相の下で裏金事件の逆風を止めて総選挙を乗り切りたいところだ。しかし、現実は甘くない。まず、裏金事件は相変わらず、自民党に重くのしかかっている。安倍派に所属していた堀井学衆院議員(北海道比例。自民を離党し、無所属)は2196万円の裏金を受け取っていたことが確認されている。その金を原資として地元の支持者らへの香典などに充てていたことが明らかになり、東京地検特捜部の捜査が続いている。派閥から受け取った裏金が、違法な活動に使用されていた典型例といえる。

「裏金議員」の公認焦点

 裏金事件で逮捕・起訴された国会議員や元会計責任者の裁判も続く。起訴されなかった国会議員の疑惑について、検察審査会に持ち込まれたケースも多い。今後の審査で次々と「起訴相当」や「不起訴不当」などの結論が出る可能性もある。

 そして、自民党にとって厳しいのは、近く予想される総選挙では、50人規模の「裏金議員」が立候補することだ。萩生田光一前政調会長、下村博文元文部科学相、松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業相ら裏金を受け取った安倍派の幹部たちの動向がメディアの注目を集めるだろう。「裏金選挙」となることは間違いない。総選挙に向けて新総裁・首相が「裏金議員」を公認するかどうかが焦点となる。公認すれば「裏金問題に甘い対応」と世論の批判は強まる。一方で、公認しなければ、自民党内から「すでに役職停止や口頭注意などの処分が済んでいるのに、公認見送りなどの新たな処分を科すのはおかしい」という反発を受けるだろう。

 裏金事件について、多くの国民は(1)政治資金収支報告書に届けていない裏金が何に使われたのか(2)その裏金は事実上の脱税ではないのか(3)政治資金規正法が改正されたが、政治資金の不明朗な使われ方は是正されないのではないか──といった本質的な疑問を抱いている。新総裁・首相がそうした疑念に応えず、裏金事件にあいまいな対応をするようだと、総選挙で有権者から厳しい批判を浴びることは避けられない。

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