自民党総裁選への不出馬を表明した岸田文雄首相
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 岸田文雄首相が9月の自民党総裁選に出馬しないことを表明し、後継選びは乱立模様で混とんとしてきた。誰が総裁・首相の座に就いても早期の衆院解散・総選挙は避けられない。派閥パーティー絡みの裏金を受け取った多くの衆院議員が立候補し、「裏金総選挙」となるのは必至だ。そして内外の重い懸案を抱え、「岸田後」の自民党の前途には、かつてない泥沼が待ち受けている。AERA 2024年9月2日号より。

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 岸田首相の退陣表明で、ポスト岸田を争う総裁選が一気に動き出した。5回目の挑戦となる石破茂元幹事長、3回目の挑戦の河野太郎デジタル相、岸田派ナンバー2の林芳正官房長官、茂木派を率いる茂木敏充幹事長、ともに若手に推されている小林鷹之前経済安保相と小泉進次郎元環境相は推薦人20人を確保し、具体的な政策づくりを進めている。高市早苗経済安保相、加藤勝信元官房長官、上川陽子外相、斎藤健経済産業相、野田聖子元総務相も立候補に意欲を示した。

 麻生派以外の派閥は解散を表明し、これまでの総裁選のような派閥の縛りは緩くなった。加えて2012年の政権復帰以来続いてきた「安倍派支配」が、同派を中心とした裏金事件で崩壊。自民党内の秩序が揺らいできたため、新たな主導権争いが活発になってきたのである。

投開票は9月27日

 総裁選は9月12日に告示され、27日の投開票に向けて論争が続く。地方党員票で優位に立つとみられる石破氏を小泉氏や林氏、加藤氏らが追う展開となりそうだ。新総裁は臨時国会で新首相に指名された後に組閣し、所信表明演説を行う運びだ。

 新政権は岸田首相退陣-新総裁選出という自民党内の事情で発足したもので、国民の信任を受けてはいない。一連の裏金事件とその対応としての政治資金規正法改正なども国民の審判を仰がなければならない。自民党内には新首相誕生という「ご祝儀相場」への期待もある。そうした事情から、だれが新首相に就任しても早期の衆院解散・総選挙は避けられない。解散が10月早々なら10月下旬の投票、10月後半なら11月中旬の投票という選択肢が浮上している。

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「裏金議員」の公認焦点