この廬山寺からすぐ近くの京都御所も、「源氏物語」でたびたび物語の舞台となっている場所だ。現在の京都御所がある場所は、1331年の光厳天皇の即位から1868年に明治天皇が東京に移るまで、天皇の住居として使用された。平安時代の建築様式で建てられ、その雅さを色濃く残す。色づく木々が水面に映る御池庭も美しい。
京都市内から、「源氏物語」フィナーレの地・宇治市に足を延ばすと、藤原道長ゆかりの平等院や、宇治十帖で恋に悩んだ薫(光源氏の息子)が頼った「宇治山の阿闍梨」のモデルがいたとされる三室戸寺など、「源氏物語」にまつわる紅葉の名所がたくさん。おすすめは、重要なシーンで登場する宇治川だ。
飛鳥時代に架けられたとされる宇治橋の西詰には紫式部の像があり、赤い欄干が美しい朝霧橋の東詰には、小舟で宇治川へこぎ出す匂宮と浮舟の像がある。昔から風光明媚(めいび)な場所として知られ、橋を渡りながら、登場人物になった気分を味わうのもまた楽しい。
もう一つ、登場人物になり切って紅葉を楽しめるスポットがある。「賢木」の帖で登場する野宮神社だ。かつては、新しい天皇が即位するたびに、天皇の代わりに伊勢神宮に奉仕する者として天皇の娘(未婚の内親王、女王)が伊勢の斎宮へ遣わされた。「源氏物語」では、光源氏の恋人、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)の娘(後の秋好中宮)が斎宮となり、この野宮神社で身を清めた後に、母とともに伊勢へ下る場面が描かれる。
紅葉には少し早いが、野宮神社では毎年10月に、「源氏物語」さながらに斎王群行を再現する「斎宮行列」が行われ、きらびやかな装束の斎宮が御輿に乗って伊勢へ向かう姿を見ることができる。
(構成 生活・文化編集部)