NHKの大河ドラマ「光る君へ」ではいよいよ、吉高由里子演じるまひろ(紫式部)が「源氏物語」の執筆に着手した。400字詰め原稿用紙にして2400枚にも及ぶ長編を執筆する間、紅葉の秋は幾度も巡ってきたはずだ。
「源氏物語」は、主人公の光源氏の恋模様や和歌、平安貴族たちの出世や政治などが盛り込まれたフィクションだが、ゆかりのある社寺や祭りなどが現存し、現代を生きる私たちが「源氏物語」の世界を追体験できるのも魅力。この物語に注目が集まる今年、作者の紫式部が人生の大半を過ごした場所や物語に登場した場所で紅葉を愛でてみるのはどうだろう。
8月6日に発売されたASAHI ORIGINAL 紅葉ガイド特別保存版「秋の京都2024」は巻頭で、「源氏物語×秋の京都さんぽ」を特集している。この記事では、なかでもとりわけゆかりの深い4カ所を公開したい。
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紫式部は平安中期に実在した、藤原氏の中流貴族だ。学者の家系に生まれ、豊かな教養を備えていたことから、時の権力者だった藤原道長の娘で一条天皇の中宮となった彰子に仕える女房として、宮中にも出仕した。
人生の大半を京都で過ごした紫式部は、曾祖父・藤原兼輔の邸宅で暮らした。「源氏物語」の多くを執筆したとも伝わる。その邸宅跡とされているのが京都市上京区にある廬山寺だ。
廬山寺を訪ねると、金色に輝く紫式部像が玄関で参拝者を迎えてくれる。寺内には、紫式部にちなんで作庭された「源氏庭」と呼ばれる庭もあり、6月~9月初旬に咲く桔梗の花で知られる。桔梗は、「源氏物語」に出てくる朝顔のことだ。そしてこの庭が、実は紅葉の穴場。今年ほど、この廬山寺の紅葉を眺めるのに適した年はない。ぜひ、紫式部の息吹を感じてほしい。