雰囲気を手話に乗せる
佳子さまは、手話関連の公務のキャリアも長い。
2014年には、母の紀子さまと聴覚障害者教育福祉協会が主催する「聴覚障害児を育てたお母さんをたたえる会」に出席。この時期には手話の勉強を始めている。
その後、高校生が手話の表現力を競う「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」、聴覚障害のある選手の陸上競技大会「日本デフ陸上競技選手権大会」などにも出席。現在は、全日本ろうあ連盟で非常勤嘱託職員として勤務している。
23年に南米ペルーを、今年5月にギリシャを訪問した際には、聴覚障害の子どもらと手話で交流をしている。
「佳子さまの手話ははっきりと、わかりやすい。それは、伸ばすものは伸ばす、指を曲げるものは曲げるなど、基本的な手の形がはっきりしているうえに力強さがあるため、動作が滑らかで相手に伝わりやすいのです」
そう話すのは、佳子さまと長年にわたって面識のある、聴覚障害団体の関係者だ。
そして佳子さまの手話のもうひとつのポイントは、表情の豊さだという。
「手話は、手だけで表現するものだと誤解されがちですが、表情豊かに顔や身体を使い、話の場面や空気感を伝えることも、とても大切なのです。佳子さまは、楽しいとき、柔らかいとき、厳しいときと、それぞれの雰囲気を手と表情に乗せることができるのです」
濃淡をつけて手話で話を盛り上げるのも上手い。それが、佳子さまの手話の滑らかさや動きの美しさにもつながっているのだという。
この日、佳子さまがコンテスト会場に入る際、外にいた人たちに向かって車の中から手話であいさつをするような仕草を見せた動画が、SNSに投稿されていた。佳子さまのライフワークとしての思いの強さが伝わってくるようだ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)