吉沢恋(写真:代表撮影/JMPA)
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 日本勢のメダルラッシュに沸いたパリ五輪。スケートボードなど若者に人気の競技ではローティーンのアスリートが活躍した。AERA 2024年8月26日号より。

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 卓球女子シングルスの早田ひなは悲願のメダル獲得だ。これまで同年代の平野美宇、伊藤美誠の陰に隠れた存在だったが、めきめきと実力を伸ばした遅咲きのエースは、初出場となる五輪で見事に銅メダルに輝いた。3位決定戦の相手は準々決勝で平野を破った韓国のエース、シン・ユビン。早田は利き腕の左前腕を痛め、テーピングが痛々しかったが、見事撃破。勝利が決まった瞬間には床に倒れ込んで涙を流し、鼻は真っ赤だった。

 試合後のインタビューでは、

「前日の試合で腕を痛めてしまって、自分の現実を全然受け入れられないままプレーしていて」

「まさか神様にこんなタイミングで意地悪されるとは思わなくて。JOCの方や日本の皆さんが本当に最後まで支えてくださって、どんな結果になっても最後までやり続ける、そして銅メダルを皆さんに見せられたらいいなという気持ちで戦いました」

 と語った。

ローティーンの活躍

 女子の快挙の一方で、男子シングルスではエースの張本智和が準々決勝で中国の選手を前に敗退。

「100%の力を出し切った。でも今の100%では彼にはかなわなかった」

 との言葉には意地ものぞき、4年後への期待を抱かせるものだった。

 東京五輪でローティーンたちのさわやかな風が吹いたスケートボードは、パリでも躍動した。女子ストリートの吉沢恋が14歳で金メダル。前回の東京五輪で西矢椛が優勝した際の「13歳、真夏の大冒険!」の実況は話題を呼んだが、吉沢の優勝の瞬間に実況された「金メダルに恋した14歳!」のフレーズもまた話題となった。

 女子パークでは東京五輪金メダリストの四十住さくらの2連覇はならなかったが、15歳の開心那が2大会連続の銀メダルを獲得した。

 数々の栄光の陰で、躍進が期待されたバレーボールやバスケットボールは欧州を中心とした強豪国の高い壁に跳ね返され、振るわず。競泳も苦しんだ。レスリング女子50キロ級では絶対女王の須崎優衣が初戦で敗れるという波乱もあった。

 再びの夢舞台は4年後。勝者も敗者も次の五輪に向け鍛錬の道に戻っていく。ロサンゼルスでの感動を今から期待したい。(編集部・秦正理)

AERA 2024年8月26日号より抜粋

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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