厚生労働省は10月から高齢者などを対象に新型コロナワクチンの定期接種を始める。写真はコロナ、インフルエンザワクチンを同時接種する武見敬三厚労相(右)=2023年10月
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 コロナ感染が拡大し、現在は「第11波」とされる。不気味なことに、コロナ以外の感染症も流行している。なぜなのか。AERA 2024年8月26日号より。

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AERA 2024年8月26日号より

 いったい何が起きているのか。

「多摩ファミリークリニック」(神奈川県)の大橋博樹院長は「まずは、『感染症の流行が、ようやく普通に戻った』という認識」とし、こう解説する。

「手足口病は『オリンピックの年に流行する』といった見方があります。手足口病の大流行で多くのお子さんが感染する。そうすると集団免疫ができ、しばらく流行が鎮まる。しかしウイルスの変異でまた大流行が起こる。これが4年に1度程度のサイクルだったのですが、コロナ禍で人との接触が激減し、手足口病を含む、コロナ以外の感染症の流行も激減した。本来は夏になると増えていた手足口病を『今年は見ないね』とこの数年なっていたのが、コロナ以前の生活に戻り、人との接触が増え、感染症の流行も復活した」

 なるほど。つまり、コロナの影響で集団免疫がなくなっている状態のため、あらゆる感染症がいったん流行し始めれば、大流行につながりかねないということだ。

「当院でもインフルエンザの患者さんが週1人くらいいて、コロナ以前の夏ではありえなかった。23~24年の冬シーズンにインフルエンザがしっかりと流行したとはいえ、まだ感染していない人も多く免疫ができていないので、夏でも感染する人がいると考えられる」(大橋院長)

地球の裏側でも危険

「中部国際医療センター」(岐阜県)の杉山温人病院長も、「集団免疫低下によって、コロナ以外のあらゆる感染症が流行しやすくなっている」と話す。さらに、インバウンドの影響にも言及する。

「今は、地球の反対の国の人であっても、約1日で日本に来られます。感染症が持ち込まれるスピードは非常に速くなっていて、地球の裏側で起こっていることでも安心とは言えません。地球温暖化でこれまで日本では見られなかった地域の感染症も見られるようになっています。これまで多くなかった感染症が急に増えてもおかしくないということを、患者さん側も念頭に置いておくべきです」

(ライター・羽根田真智)

AERA 2024年8月26日号より抜粋