「自分が差別される側だと気づくのはつらいことです。けれど、知ることで解放され、自分が定まり、考え方に一本芯が通りました。フェミニズムに出会ったことは、とても大きな転換点です」

 以来、フェミニズム的な問題意識を持って小説を書いてきた。世界でも同時多発的にジェンダー関連の発信が大きな流れとなり、2017年の#MeToo運動につながっていく。ずっと一緒に走ってきた山内さんには当然のことだが、突然ジェンダー平等と言われて困る人も多い。この小説では大学生の杏奈がマリリン・モンローを知ろうとすることで、よくわからなかったジェンダーの意識がどんどんクリアになっていく過程を描いた。

「SNSの影響もあって、ジェンダー意識の高い人とそうでない人の差はとても大きい。NHK朝ドラ『虎に翼』のように、価値観がアップデートされたものをみんなが何気なく見ているという状況が、全体を底上げするのではないかと思っています」

 本書も底上げしてくれると同時に、二人の連帯から生まれた希望が厳しさの中で生きる人を力づけてくれる。

(ライター・仲宇佐ゆり)

AERA 2024年8月26日号

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