パリに向けて、フォアハンドの強化とバックの安定性を意識したトレーニングを中心に行い、軸がぶれず力強いプレーができるようになってきた=7月上旬、地元の卓球クラブで(撮影/越智貴雄)

 新しいことに挑戦をする。涙を流すほど悔しい思いをしても、根性で乗り越える。そのことを、和田は卓球を通じて学んだ。和田の母は「知的障害のある子は、人生の経験をさせてもらえる場が少ない。卓球は、経験する場所を与えてくれた」と話す。

 卓球以外にも新しい挑戦を始めた。昨年4月、現役アスリートの就職を支援する制度「アスナビ」に参加し、内田洋行に入社することが決まった。114年の同社の歴史で、知的障害者を雇うのは初めてだったという。採用を担当した長谷川泰氏は言う。

「採用に関しては正直、不安もありました。それでも、和田が卓球を通じて『いろんなことに挑戦をしたい』と言っているのを聞いて、私たちも会社として新しい挑戦をしようと決めました。アスリートを引退した後も、長く働き続けてほしいですね」

 和田は、入社した時の挨拶で、同僚にこう話した。

「障害のある私が挑戦していることで、誰かが元気になってくれたらうれしい」

 最近では、試合中は笑顔でいることを心がけている。

「怖い顔をしている時は、ミスが多い。だから笑って気持ちを切り替えてます。対戦相手も『なんで笑ってるの?』と嫌がる選手も多いんですよ」

 パリでも見せるであろう笑顔が、和田の最大の武器である。(フリーランス記者・西岡千史)

AERA 2024年8月26日号

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