山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「家族の病気で考えたこと」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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「お母さんに、すい臓に5センチほどの影が見つかって……」

 日本にいる父親から、急に連絡が入ったのは今年の2月のことでした。母が10年来付き合ってきた脊柱管狭窄症に対する、2度目の手術前の検査で影が見つかり、もともとの腰の手術が白紙になりそうだという連絡でした。

 私の母は、13年ほど前に脊柱管狭窄症を発症しました。次第に歩行がおぼつかなくなるも、「どうってことない」と我慢していた母は、ある日、犬の散歩途中に転倒。あまりの痛みに近所の整形クリニックを受診したところ、肋骨が骨折していたことに加え、脊柱管狭窄症であったことが告げられたといいます。

 頚椎と腰椎の2カ所に病変があった母は、その時すでに、包丁も持てなくなるほどの筋力の低下をきたしており、次第に強くなる手の痺れを我慢していたような状態でした。幸い、すぐに手術をする運びとなり、手の筋力は回復したものの、しびれは完全には無くなることはなく、歩行も依然としておぼつかないため、杖が必需品となりました。

 7年ほど前に祖母が重度の認知症を発症してからは、自分の病気は後回しで、祖母の介護をする日々だった母。ここ数年、再びしびれが強くなり、毎晩のように襲ってくる足のつりに悩まされるようになり、祖母の認知症がやっと落ち着いた今年になり、再手術を決意したのでした。

 そんな矢先に見つかった5センチ大の膵臓の影でしたから、母も父もとても驚いたと思います。「がんだったらどうしよう……転移していたらどうしよう」という父の不安が、電話越しに伝わってきたのを覚えています。

 幸い、腰の手術とすい臓の影に対する手術はどちらも無事に成功。すい臓の影は、大きさが6センチ大の境界悪性の消化管間質腫瘍(ジスト)であったことがわかり、転移は今のところなく、定期的な経過観察を行なっていくことになりました。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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