写真はイメージ/GettyImages

 腰と腹部の術後のリハビリは思ったより辛そうで、手術直後には、「体重が人生最軽量を更新してしまったよ」と連絡がありましたが、今ではすこぶる順調に回復しているようです。

今度は祖母が骨髄検査に

 そんな母の状態に安堵していた、初夏のある日のことでした。「かかりつけ医に紹介されて、大学病院で骨髄検査。ちょっと心配していますが、きっと老化現象よ」と、88歳になる祖母からメッセージが届いたのです。

 どこへでも自転車で行ってしまうような元気な祖母からの連絡だったこともあり、「おばあちゃんに限って、病気だなんて考えられない。」と鷹を括っていたのですが、検査の結果、祖母は骨髄線維症を患っていることが判明。「血液が作られなくなっていってるんだってさ。老いだから仕方ないね」と受診の帰りの祖母から届いた一言に、私はどう応えていいかわからなくなってしまったのでした。

 骨髄線維症とは、造血細胞を支える線維組織を作っている線維芽細胞が過剰に線維組織を作ってしまう結果、赤血球、白血球、血小板などの血液細胞が骨髄で正常に作られなくなってしまう骨髄増殖性腫瘍(※1) の一つです。動悸や息切れ、倦怠感などの貧血症状の他、腹部膨満感や腹痛などの副症状、出血傾向などをきたします。

 祖母も、実は数年前から、とても疲れやすくなっていたといいます。毎日のように乗っていた自転車も乗るのが辛くなり、毎週のように行っていた市民センターでのストレッチも、長らくお休みしていたようです。布団につまずいて転倒したときにぶつけた唇が、内出血のせいで大きく腫れ上がり、なかなか腫れがひかなかったなんてこともあったようです。

 これまでの不調の原因がわかった祖母は、90歳を超えた祖父とこのままこれまでと変わらない生活を維持したいという理由で、内服治療は希望せず、貧血がひどくなったら輸血をしてもらうことに決めたようで、「体力や生活の質などを考えての決断だと思うから、受け止めてあげてくれると嬉しいです。」と後日、母から私に連絡がありました。予定されていた遺伝子検査もキャンセルしたと聞き、運命を受け入れる祖母の強さを感じざるを得ませんでした。

 今年で35歳になり、「もうそんな歳になったのか……」なんて呑気に思っていたのですが、祖母や母の病気の連絡を受け、同じように歳をとっていたのだと、改めて痛感したのでした。日々、健康に過ごせることに感謝するとともに、今までないがしろにしがちだった家族との時間も、大切にしなければならないと思う今日この頃です。

【参照URL】 

(※1)https://cancer.qlife.jp/blood/leukemia/mpn/article16806.html

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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