歩行では健常者の何倍も

 そしてもうひとり。ひざ下が不自由な息子は、今ではほぼ「不自由なこと」はなくなり、どこにでもいる高校2年生なのだと思います。それでも、過保護な私はずっと必要以上のサポートをしてきたのですが、この2カ月程、私の体調が安定せず、車での送迎が難しい日もありました。今までは私の都合がつかない時は私の父に送迎を頼んでいましたが、父も後期高齢者になり、なるべく運転する機会を減らしたいため、息子に自力で動いてもらうことが増えました。

 真夏の歩行は健常者の何倍も体力を使います。はじめは心配でしたが、汗だくになりながらも電車と徒歩で移動するようになると、自分の好きなタイミングで自由に動けた方が良いと言うようになりました。さらに夏休みに入ってからは、私の不在時には自分で簡単な昼食を用意しています。レトルトや冷凍食品が主ですが、自分で調理をして食事をし、洗って片づけることができるようになったのは大きな進歩です。こんな機会がなければずっと過保護に育ててしまったかもしれず、高2の今、大きく自立することができて良かったと思っています。

 最後に夫のことを少し書きます。我が家は基本的にワンオペで、夫は休日もほぼなくずっと働いています。夫の会社は航空貨物を扱っているので、台風などで欠航便が出るとさらに自宅に帰れなくなります。今回、長女が入院した日がまさに台風が接近した日でした。週間予報を見ながら、長女をひとりで連れて行くことになると思っていたのですが、今回だけは数時間抜けられるように調整してくれたようです。私には気の利いたことを言ってくれず、長女の病院でも無頓着さにずっとイライラさせられましたが、やっぱり一緒に行ってくれて嬉しかったです。

 今回の手術のために、結婚して初めて結婚指輪を外しました。結婚してから帝王切開を2回していますが、むくんで指輪が外れず、緊急だったこともあり、そのままオペ室に入りました。でも今回の手術では、やけどの可能性があり最悪の場合は指輪を切るとのことだったので、頑張って抜きました。2日経った今も薬指には20年間分の跡がくっきり残っています。

 手術が無事に終わりますように。

AERAオンライン限定記事

著者プロフィールを見る
江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

江利川ちひろの記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
家庭用脱毛器の基本的な効果やメリット・デメリットは?ケノンをはじめおすすめ商品も紹介