不動産会社も「ペアローン」後押し

 不動産会社も、「今は共働きの夫婦が多いので、ペアローンを組む人がぐっと増えています」「都心の物件を買うサラリーマン世帯は、ほとんどペアローンになっていますよ」と言う。ペアローンにすれば、住宅ローン減税(住宅ローンの利用者を対象に金利負担の軽減を図るための制度)が2人分適用されるのもメリットだと感じた。

 今後、子どもが生まれても、夫婦ともに働き続けるつもりでもあった。予算を大幅にオーバーした物件だったが、ペアローンを使って計算してみると「手が届く範囲だ」と意見が一致した。

世帯年収1千万以上で「ペアローン」77%

 Aさん夫婦のように、共働きの会社員がペアローンで不動産を購入するケースが増えている。

 首都圏の新築マンション契約者を対象に、ローンの契約形態について調査した結果(リクルート「2023年首都圏新築マンション契約者動向調査」)によれば、「世帯主と配偶者のペアローン」が全体の34%と、2018年以降で最も高くなった。夫婦のみの世帯で言えば、「世帯主と配偶者のペアローン」が54%を占める。また、既婚・共働き世帯を総年収別にみると、総年収1千万円以上の世帯の方が、ペアローンの割合が高く、実に77%を占める。

 野村不動産が22年上半期に販売した1億〜1億5千万円のマンション購入者を調査した結果によれば、会社員が52%と、経営者や医師を大きく上回る。年収でいえば、1500万円以下が59%を占めており、1千万円以下も33%いるという。

「パワーカップル」が億ション購入

 不動産の傾向を長年調査している、東京カンテイの井出武さんは言う。

「都心を中心にマンションの値上がりが続くなか、資産形成の選択肢としてマンションを購入する動きが、会社員にも広がっています。購入者は主にパワーカップルです」

 単独で借り入れられる額には限界がある。ペアローンによって、会社員の収入でも“億ション”購入が可能になり、購入者の裾野が広がっているのだ。

 さて、物件選びでAさん夫婦が譲れなかったポイントは、3つある。

次のページ
条件に「資産としての価値を保てる」立地