家があまりに高すぎる――。ペアローンを組み住宅を購入する共働き世帯が増えている(写真はイメージ/gettyimages)
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家があまりに高すぎる――。都心部を中心に新築マンションの高騰が続くなか、共働きの会社員が、「ペアローン」で不動産を購入するケースが増えている。なぜ、「ペアローン」という決断に至ったのか。高騰する「住まい」に悩む現代人を追う特集の1回目。

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2LDKのマンションが1億1千万円

 東京都在住の会社員、A子さん(37)は、夫(41)と2人暮らしで共働きだ。

 A子さん夫婦は2年前、思い切って新築マンションの購入に踏み切った。都心の駅から徒歩7分という好立地に立つ2LDKで、価格は1億1千万円だった。

 A子さんはメーカー勤務、夫はコンサルティング会社勤務で、夫婦2人の世帯年収は約1500万円。いわゆるパワーカップルにあたる。

 マンション購入を検討し始めたのは、結婚から数年が経った3〜4年前だった。当初の予算は「できれば6千万円前後、高くても8千万円まで」。

「あの時に決めていたら、もう少し安く買えたのに」

 だが、都心にはそんな価格帯で買える新築マンションは存在しなかった。それどころか、マンションの価格は年々上がっていく。価格上昇のニュースを見るたび、「あの時に決めていたら、もう少し安く買えたのに」と後悔することが続いた。

「先延ばしにせず、買える時に買わないと」「この1〜2年で決めよう」

 決意を固めながらリサーチを続け、ついに購入したのが、今住む都心のマンションだ。

 契約時はまだ完成しておらず、モデルルームを見ての検討だったが、望んだ“条件”がすべてそろい、「ここしかない」と思えた。

「ペアローン」が背中を押した

 購入にあたり、一番の課題が「億ション購入の資金をどう工面するか」だった。世帯年収1千万円超えではあるが、夫の年収は800万円、妻の年収は700万円。1億1千万円の物件は、どちらかの単独ローンでは満額の借り入れが難しい。親からの援助も受け、頭金として2千万円は用意したが、大部分をローンで支払うことになる。「億を超える物件は背伸びしすぎでは」と不安も募った。

 その背中を押してくれたのが、夫婦二人でローンを組む「ペアローン」だ。 

 ペアローンは、1つの物件に対して夫婦や親子それぞれが、原則として同じ金融機関からローンを借りる方法で、物件の所有権も共有名義になる。単独ローンより、1.5倍ほど借入額を増やすことができる。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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共働き夫婦のペアローンは増加