JR京都駅に到着し、沿道の歓声の中、手をつないで歩く上皇さまと美智子さま=5月14日、京都市(阿部満幹さん提供)
JR京都駅に到着し、沿道の歓声の中、手をつないで歩く上皇さまと美智子さま=5月14日、京都市(阿部満幹さん提供)

「皇太子さまは最後まで、自分は普通の結婚の幸せを保証してあげられない、皇太子という特別な立場にあっていちばん大事なのは公の義務であり、私事はその次の問題である、と言い続けていました」

 そして、佐伯さんはこう続けた。

「おそろしく生真面目で責任感の強い男性だと思うでしょ。でも美智子さまは、かえってそんなところを好きになった。きっとそうですよ」
 

「葵祭を見たいと思って」

 美智子さまが体調を崩したときは、上皇さまがその手と腕をしっかり握りながら歩いた。そして2012年に上皇さまが心臓のバイパス手術をしてからは、美智子さまが上皇さまを支えて公務に臨んだ。

 今回の旅行でも、おふたりは優しく手をつなぎ、支えあって歩いた。京都市の大聖寺で、美智子さまがよろけた瞬間があった。上皇さまはすぐに手を伸ばし、美智子さまの体をそっと支えた。

 若い世代が沿道から温かく見守る。そんな様子を肌で感じたのだろうか。おふたりには2日目以降、変化があった。

「まず、上皇さまの表情が大きく変わりました。初日はやや表情が硬いご様子でしたが、2日目以降は表情豊かになられたように感じます」(阿部さん)

 美智子さまも表情が柔らかく、笑顔が増えた印象だ。

 上皇さまは、元赤坂の仙洞御所の改修工事が終わるまでの一時期、高輪の仙洞仮御所にお住まいだった。おふたりはその時期から、沿道の人たちにお手ふりをする場面が減り、軽く会釈をする仕草が多くなった。しかし、今回はお手ふりをする場面がよく見られたという。

「上皇さまの退位後は、意識して目立つことを控えておられたのだろうと思います」と、事情を知る関係者は言う。
 

 新型コロナで外出を控えていたおふたりにとって、私的に旅行をされるのは4年ぶり。今回の旅行の目的のひとつが、京都三大祭りの一つ「葵祭」をご覧になることだった。

 おふたりがご覧になったのは、「路頭の儀」。天皇の勅使や検非違使や内蔵使(くらづかい)、牛車に斎王代など、平安貴族の装束に身を包んだ500人余りの行列が、京都御所から下鴨・上賀茂両神社へと歩くものだ。

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葵祭でのハプニング