バッキンガム宮殿の前で記念撮影をする佐藤さん夫妻(本人提供)

本当に心が清らかな方たちなのだな…

 それから約2週間後の25日。直前にプールで足をぶつけて骨折するというアクシデントに見舞われた佐藤さんだが、友禅染の着物に草履をはき、同じく和食の料理人である夫とともに晩さん会へ出かけた。

 宮殿の入り口で招待状を見せると、中の広間に案内された。そこではゲストたちがシャンパンを片手に歓談をしており、日本人の姿もあったが、緊張のあまり周囲と交流を深めるどころではなかった。招待者リストには、日立製作所の東原敏昭会長やNTTの澤田純会長ら、そうそうたる顔ぶれが並んでいた。

 20~30分ほど経ち、広間から出て行く人の流れについていってみると、赤のじゅうたんが敷かれた廊下に出た。テレビクルーに撮影されていることに気づかず、「こんなたいそうな場に呼ばれちゃったけど、楽しむしかないよね」などとしゃべりながら歩いていた佐藤さん夫妻。晩さん会の会場であるボールルーム入り口に差し掛かったところで、「えっ!?」とたじろいた。チャールズ国王とカミラ王妃、そして天皇、皇后両陛下が参加者を出迎えていたのだ。

「King(チャールズ国王)とは英国式に握手をしたんですけど、天皇陛下と握手をするのはさすがにだめだと思って、何回もお辞儀をしました。『ロンドンに来て下さってありがとうございます』と伝えると、両陛下はニコニコとうなずいて下さいました。雅子さまは、テレビの映像から想像していたよりも小柄に見えて、可愛らしい印象でした。両陛下とも、一般人とはちがう世界の人でありながら、威圧感のようなものはまったくなく、本当に心が清らかな方たちなのだなと感じさせる、優しいオーラを漂わせていらっしゃいました」(佐藤さん)

 その後の晩さん会も、終始和やかに進んでいった。チャールズ国王は冒頭のスピーチで、両陛下に日本語で「お帰りなさい」と語りかけたり、「全部ゲットだぜ!」とアニメ「ポケモン」の名ゼリフを引用したりと、「かしこまった特別な場ではあるけども、みんなが緊張しない雰囲気」を作ろうとしているように見えたという。

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料理のプロも納得のメニューとは?