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 プライベートはいざ知らず、職場でも「方言」で話す人をどう思うか──。感じ方に個人差があるであろうこの問いに、真正面から向き合ってみたい。方言もうまく使えば、むしろ仕事にプラスになる? AERA 2024年8月12日-19日合併号より。

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「仕事の場で方言を使うことって、失礼だと思うんです」

 神戸市で会社員として働く53歳の女性は、いま職場で「ひじょうに嫌な気分」を味わっている。もともと九州出身で、以前勤務していた東京の会社では「標準語」で周囲とコミュニケーションをとっていた。

「当時から関西出身の人が職場で方言を使うのが苦手で。すみませんと言えばいいところを『えろうすんまへん』、大丈夫ですよは『かまへん、かまへん』とか。やめてほしいなと」

 ところがその会社が5年前に関西の企業と合併、あろうことか関西弁の渦の中に巻き込まれる毎日となった。

「仕事なのに、関西弁という方言を使うことが当たり前だと思っている感覚がまず疑問。東京弁はときに『冷たく聞こえる』と言われますが、仕事って基本は無機質なものだと私は思っています。方言で相手と近しくなれることもあるでしょうが、私は使いたくないですね」

 仕事の場での方言は「失礼」か。日本サービスマナー協会の宮内優衣さんは、マナーという観点で言えば「ビジネスの場では標準語が適切だ」と話す。

「マナーとは、『相手目線』が基本。方言を使うことで相手にその表現が伝わりにくくなってしまうようではNGです。たとえば私の出身地・茨城には『ごじゃっぺ』という『(悪い意味で)適当』という意味の表現がありますが、社内の会話で上司に『先方の担当者がごじゃっぺで、まだ返事が来ません』と言っても伝わりませんよね」

「訛り」にも注意すべき

 地域独特の言葉という意味での方言に気をつけることができても、イントネーション(訛り)は抜けにくい。宮内さんは「そこは許容範囲」としつつ、注意すべき点があると指摘する。

「プレゼンテーションや公の場では、聞き慣れないイントネーションに気を取られて重大な情報を聞き逃すなど、情報を取り入れる側にとっての阻害要因になることも。社内の簡単なコミュニケーションなら問題ありませんが、公の場ではイントネーションにも注意すべきです」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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