敗退決定後は、主将としてU-23代表での活動をこう締めくくった。

「優勝を目指してやってきたが、スペインは強かった。自分としてももっとできないといけなかったし情けなかったが、みんなとここまで戦えてよかった。(大岩ジャパンは)みんながチームのことを愛してチームのために戦える集団だった。最後は主将としてみんなに助けられたっていうのが正直な気持ち」

 藤田は以前から英プレミアリーグへの移籍希望を公言してきたが、パリ五輪でのプレーを見れば、近い将来ビッグクラブから声がかかっても不思議じゃないプレーぶりだった。

数字にこそ残らなかったが能力の高さは示した

日本0-3スペイン(準々決勝)/細谷真大 1点ビハインドの前半40分、細谷が相手を背負いながら反転し、右足でシュートを決めたが、オフサイドで「幻のゴール」に。この判定は世界的に物議を醸した(写真:AP/アフロ)

 そして、もう1人評価を高めたのが、得点こそイスラエル戦の1点に終わったが、前線での体を張ったプレーや相手DFの背後に走る動きなどで1トップとしての役目を果たしたFW細谷真大(柏レイソル)だ。

 今年1月から2月にかけて行われたA代表のアジアカップ・カタール大会では思うような働きができずに、その後のJリーグでも調子は上がらず。予選をかねたU-23アジア杯でも時折らしさを見せたものの、大会を通して満足なパフォーマンスを見せていたとはいえなかった。だが、パリ五輪では大会を通して前線で攻撃の起点となりつづけた。

 準々決勝のスペイン戦では1点を先制された40分、相手ペナルティエリア内でDFを背負いながら縦パスを受け、反転して見事なシュートを決めたが、残念ながら足のつま先が背負ったDFよりわずかに出ていたとしてVARで取り消されてしまった。

 スペイン戦では、さらにFKからのヘディング、相手GKとの1対1からのシュートと2度ポストに嫌われたが、いずれもそれまでの流れは完璧だっただけに、数字にこそ残らなかったが能力の高さは示した。

 細谷自身スペイン戦後、力不足を痛感しながらも世界の舞台で戦える手応えも感じたと話していた。

「自分のよさを出せるところが二つ、三つあったので、そこで一つでも決めていれば、試合の流れが変わっていたかもしれないし、FWとしてもっと上にいかないといけない。VARで取り消されたゴールについては自分的にはオフサイドではないと思っていた。(その後のプレーにその判定の影響があったか?)全然ないって言ったら嘘になる。でも、自分としてはすぐに切り替えられたと思っている。この悔しさはA代表でしか晴らせない」

 パリ五輪で頭角を現した3選手がA代表の主軸としてプレーする日もそう遠くはないかもしれない。

(スポーツライター・栗原正夫)