過激主義の中には、気候変動否定論、反ワクチン、Qアノンなど様々な組織がある。

「私自身もあと一歩ではまりそうになった組織があります」

 それがTradwivesという組織だ。反フェミニストの女性数万人からなる世界的な極右のネットワークであるが、子育てと仕事の二重の負担など、個人の不満に付け込み、それが機縁となって感化され、急進化することに抵抗がなくなってしまうという。

 エブナーさんが過激主義について調査を始めたのは2015年だが、当時は過激主義が主流になる兆候はなかった。

「今は誰もが過激主義思想に陥りやすい時代ですが、その最大の要因は我々が多次元の危機の連鎖の中にいることです。ヘルス危機、インフレ危機、ウクライナ、ガザなど安全保障の危機がグローバルレベルで火花を散らしています。過激主義組織に潜入してメンバーに話を聞きましたが、多くの人が自分の将来にかなり不安を感じていることがわかりました。過激主義者らはその不安をさらに煽り、既存制度への不信を増大させます。彼らはその解決策を与えてくれるような気持ちにさせます」

 日本のアニメやポップカルチャーも過激主義組織に悪用されており、日本にもメンバーがかなりいるというから対岸の火事ではない。誰もが過激主義の餌食になる時代。自分には関係ないと思っている人ほど読んでほしい作品である。(ジャーナリスト・大野和基)

AERA 2024年8月12日-19日合併号