近代以前、死んだ(間引きした)新生児の遺体を置く場所として、小さな洞窟や古墳の石室が選ばれることはよくあった。それらは今でも日本各地に「捨て子塚」「子捨て塚」「赤子塚」などの名称で伝えられている。目につかない場所だからという実際的理由のほかに、もと来たところである子宮へ戻す「子返し」のイメージとして、岩穴や洞窟が選ばれたのだろう。
子宮へ返す想像も
コインロッカーへの新生児の遺棄もまた、子宮へ「返す」想像が含まれていたのではないか。もし手元から捨てたいだけであれば、当時なら路地裏のゴミ箱に投げ入れたり、深夜の公衆便所へ放置したりすることもできたはずだ。だがそこでコインロッカーが選ばれたのは、子どもが子宮へ戻され、またいつか産みなおされるという想像がどこかにあったからなのでは。
コインロッカーベイビーの怪談は、確かに子殺しの母を糾弾する話ではある。
だが一方で、捨てられた子がそのまま成長していくといった想像を持たされる話でもある。
いったん暗くて狭い子宮のような箱に「返された」子どもが、再びこの世に戻ってくる。コインロッカーベイビーの怪談には恐怖と告発だけでなく、そのような願いの一片も孕んでいるような気がするのだ。
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