老舗企業と新興企業、創業者と買収者……。企業の見えざる闘いを掘り下げるポッドキャスト番組「ビジネスウォーズ」案内人の春風亭一之輔さんと制作を手がけるアマゾンジャパン合同会社の柴田周平さんが語り合った。AERA 2023年4月10日号より紹介する。
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――落語とポッドキャストの語りに違いはありますか。
春風亭一之輔(以下、一之輔):一人でたくさんの人物を演じるところは共通しています。ただ、男性や女性、大人と子どものようにいろんな立場の人が出る落語と違って、「任天堂vs.ソニー」なんかはおじさんしか出てこない。どう演じ分けるべきかわかりませんでした。
柴田周平(以下、柴田):制作するうえでは、没入感を意識しています。「トヨタvs.ホンダ」のエピソードでは、会議室で本田宗一郎とトヨタの幹部が会話するシーンがあります。自分の目の前で2人が会話しているような気持ちになるようなサウンドデザインや音楽、語りを組み合わせています。
■人間っていいよね
一之輔:台本に忠実でありながらも、魅力を伝えるのが僕の仕事です。企業戦争における事実はもちろん、中身や登場人物の人間的なところを伝えたい。かっこよさもあれば、いやらしさもあるし、冷徹なところだってある。すべてひっくるめて人間っていいよね、と。ただ、横文字が多いんですよね。落語って、あまり使わないじゃないですか。台本を読むときは顔が険しくなっているみたいです。
――柴田さんはNHKでドキュメンタリーを作ってきて、映像から音の世界に飛び込みました。
柴田:美しい映像やインパクトのある映像をどう作るかということに腐心してきました。ただ、前職でポッドキャストを開発する仕事をすることになって、最初は映像がないと伝わりづらいんじゃないかと思っていたんですけど、逆でした。声しかないことで話の内容がぐっと入ってくる。音声表現の可能性を感じました。
一之輔:落語の場合も、イマジネーションを働かせるとしたら、映像があるより音だけのほうがいいと僕は思います。