「阿部サダヲさんは“チャッピー小林”の世界にあわせて、“アベィ・サディ”という強烈なキャラクターで現れてくれて。すごく楽しく共演させていただきました。小泉さんにはステージの構成や照明、音のバランスなど細かいところまでみていただいて。ご自分のコンサートの演出も手掛けていらっしゃるだけあって、本当に頼りになりました。なにより、誰よりも楽しんで、盛り上がってくれるんですよ。こちらとしてもすごく安心できたし、たくさん勇気をいただきました」
「最初は『どうなるんだろう?』と思っていましたけど、やってみたらびっくりするほど楽しくて。1回限りだからそう思えたのかもしれないですけど(笑)」と初めてコンサートの手ごたえを笑顔で話す小林さん。50代になってからピアノを習い始めるなど、芝居と同じく、音楽とも自然体で付き合っているようだ。
「ピアノを弾くようになって『すごいピアニストも最初からうまかったわけではなくて、練習を重ねて少しずつ上達したんだな』とあらためて思うんです。私の進歩はかなり遅いですけど(笑)、それでもちょっとずつ弾けるようになって。俳優の仕事もそうですが、表現には完成がない、終わりがないなと思いますね」
(取材・文/森 朋之)
こばやし・さとみ/1965年東京都生まれ。1982 年「転校生」(大林宣彦監督)でスクリーンデビュー。主な出演作にドラマ「やっぱり猫が好き」「すいか」「ペンションメッツァ」、映画「かもめ食堂 」「紙の月」「ツユクサ」、舞台「阿修羅のごとく」など。第38回日本アカデミー賞助演女優賞をはじめ数々の賞を受賞。エッセイストとしても多くのファンを持つ。近著に「茶柱の立つところ」(文藝春秋)など。2024年4月6日、7日に横浜赤レンガ倉庫で行われた自身初のコンサート「小林聡美NIGHT SPECTACLES チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ」は、2日ともチケットがソールドアウト。ディープな歌謡曲を歌い上げ、新境地をみせた。ステージの様子は2024年8月24日にWOWOWで放送・配信されることが決定している。