――鹿児島県警では不祥事が相次いでいた。昨年中の懲戒処分者は6人、今年は既に4人だという
確かに多いようだ。不祥事が続き、県警の雰囲気がどんどん悪くなるなかで、本部長のリーダーシップがどうだったのか、本部長の意思は部下にきちんと伝わっていたのかどうか、文書管理にも問題がありそうだ。一連の報道を見ると疑問に思うところが多々あり、そうした背景事情は重要なところだと思う。
――生安部長は、この内部告発について公益通報だと主張している
公益通報と言えるのだろうか。部長という彼の立場からして、通報する以上は問題についての客観的証拠をいくつかは示す必要があるのではないか。さらに内部告発に彼の主張とは矛盾する内容が含まれていた。本部長に隠ぺいの指示をされたと主張しているのに、告発文書では指示したのが刑事部長と記されている。これは告発の根幹部分であり、そうした虚偽の申告も許容されるべきなのだろうか。
――生安部長は県警の公益通報窓口ではなく、マスコミに通報した
県警トップを告発する内容なので致し方ない面があろうかと思うが、通報先として県警でなくとも警察庁という選択肢はあった。そうしなかったのは、残念ながら警察組織そのものを部長自身が信頼していなかったということだろう。
公務員には高度な守秘義務がある
――公益通報者保護法の下では、雇い主は通報したことを理由に通報者に不利益な取り扱いをしてはならないことになっている
その一方で、さまざまな秘密情報を扱う警察官には高度な守秘義務がある。生安部長が漏らした情報のなかにはストーカー被害者の氏名もあった。犯罪被害者の個人情報は守秘義務の最たるもの。本来何をおいても守らなければならないものだと考える。こうした情報が漏れてしまうようでは国民の信頼を失う。ここは警察の責任として極めて重要なところだ。
――守秘義務と公益通報者保護のどちらが優先されるか、比較衡量の問題になるのだろうか
裁判などの場で今後の議論になるかもしれない。私には、公益通報者保護が、常に警察官に課せられた重大な責任を上回るとは思えない。