桑原振一郎氏
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 県警の最高幹部が本部長を告発するという前代未聞の事態に陥っている鹿児島県警。特別監察に入っていた警察庁と鹿児島県警が2日、不祥事の原因分析と再発防止対策について公表した。組織の緩みを指摘する内容となったが、この問題はそれだけでない。公益通報との絡み、メディアに対する強制捜査の是非という問題もはらむ。AERA dot.は、元警察大学校長で、警察庁首席監察官の経験もある桑原振一郎氏から話を聴いた。

【写真】不祥事の内容もさることながら、事後処理のまずさが致命的だった事例

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 鹿児島県警の問題は今年5月31日に発覚。退職したばかりの本田尚志・前生活安全部長を県警が国家公務員法違反(守秘義務違反)の容疑で逮捕した。警察官が起こした盗撮事件とストーカー事件の捜査資料を札幌市のジャーナリストに送り付けたとされる。本田前部長は容疑を認めつつ、野川明輝本部長が犯罪を隠ぺいしようとしたなどとし、送り付けは公益通報に該当すると主張している。この捜査に関連して、県警は福岡市内のウェブメディアを家宅捜索している。

 2日に公表された報告書は、幹部による指揮や統率が不十分で、各部門の縦割り意識が強く、連携も希薄だったことなどが問題の背景にあるとし、県警の組織運営の問題を指摘。今後の対策として、都道府県警の幹部を対象とした研修の強化や、部下による幹部職員の評価制度の採り入れなどを挙げた。

 前生安部長は隠ぺいの指示を説明する中で、「早急に事件に着手すべきと考え、本部長指揮事件指揮簿に迷いなく印鑑を押して、本部長に指揮伺いをした」としているが、報告書は、前生安部長が印鑑を押した事実は認められず、本部長に報告や指揮伺いした事実は認められなかったと否定している。

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――警察庁の監察は首席監察官が現地に赴く特別監察だった

 監査には定期的に入る通常監察と、必要が生じて入る特別監察がある。首席監察官が現地に入るのは珍しいことだ。今回のケースは本部長が疑惑を持たれているという事情に鑑み、調査結果の客観性、公平性に疑念を持たれることのないよう意識したということだろう。

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