みずみずしくておいしい味付きの冷やしキュウリ。食中毒のリスクがあることをご存じだろうか(写真はイメージ/gettyimages)
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 8月に入りました。最近「AERA dot.」で掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は7月4日に「AERA dot.」で掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

【写真とデータ】うまみ調味料がエサに? 冷やしキュウリの「衛生管理」とは

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「冷やしキュウリ」といえば涼を感じさせる夏の風物詩のひとつだ。だが、衛生管理を誤れば食中毒のリスクがあることをご存じだろうか。「細菌が増殖しやすい条件が揃っている」と専門家はいう。気を付けるべきポイントとは?

 みずみずしい夏野菜の代表格、キュウリ。サラダに漬物にと大活躍する野菜のひとつだ。だが、大規模な食中毒が過去に複数発生している。

510人が食中毒、114人が入院

 2014年7月、静岡市の花火大会での集団食中毒事件では、露店の冷やしキュウリを食べた510人が腸管出血性大腸菌O157(以下、O157)による食中毒を発症し、うち114人は入院する事態になった。

 16年には千葉県と東京都の老人福祉施設で提供された「キュウリの和え物」でO157を原因とする食中毒が起こり、発症者のうち10人が死亡した。

 15年にはキュウリを原因とするサルモネラの食中毒が全米に広がり、数人の死亡者を出した。24年6月にも、キュウリがサルモネラに汚染されている可能性があるとし、アメリカの14州で大規模な回収が進んでいるという。

 確かに夏場は湿度も気温も上がり、冬に比べれば細菌は繁殖しやすいだろう。だが、キュウリといえば、水分が90%以上を占め、最もカロリーが低いとギネス世界記録に認定された野菜でもある。なぜ、食中毒が起こりやすいのか。

生野菜と家畜の腸内環境の関係

 東京農業大学食品安全研究センターの五十君靜信センター長は、キュウリなどの生野菜で食中毒が起こる要因のひとつに、「家畜の腸内環境」を指摘する。野菜と家畜の腸内環境とは、一体どういうことなのだろう。

「O157やサルモネラは、牛など家畜の腸管内に生息することが多い。家畜の糞便がさまざまな経路で食品や水を汚染し、人に感染すると言われています。と畜場で牛の腸管のO157の保有率を調べた研究によると、6月の後半から10月頃までには約25%の牛からO157が検出されたと報告されています」(五十君氏、以下同)

東京農業大学食品安全研究センター・五十君靜信センター長
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