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 預貯金や有価証券、株式などの金融資産の相続。財産が多くて節税したい場合、親が生きているうちに対策しておきたい。そこで上手に利用したいのが「生前贈与」だ。AERA 2024年8月5日号より。

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 不動産と違って、預貯金や有価証券、株式などの金融資産はある意味、明快だ。

「難しいことは一切ありません。預貯金なら残高、有価証券や株式ならその時々の『時価』がそのまま相続財産になります」(「夢相続」代表・相続実務士の曽根恵子さん)

 従って、金融資産が多くて節税したいのなら相続対策は「減らす」になる。親が自分で使うか、親族などに分ける「生前贈与」を行うかなどだ。相続専門税理士の廿野(つづの)幸一さんは、「生前贈与はライフプランが1番で節税は2番で考えるべき」が持論だ。

「財産を持つ人の生活がまずあって、その上での相続です。親が要介護状態になる最終局面まで考えたうえで計画をたててください。今や介護で子供の世話になる時代ではありませんから、最後は有料老人ホームでしょう。その入居費として残しておくべきお金を考えたうえで、なお余りがあるようなら生前贈与を検討してもらえばいいのです。生前贈与をしすぎてしまい、親の備えが手薄になってしまったのでは本末転倒になります」

 生前贈与で利用できる制度はいっぱいある。

 よく知られているのは「暦年贈与」だ。1人に年110万円までの贈与は非課税になる。複数の相続人らにコツコツ贈与し続ければ相当の節税効果がある。

 ただし、今年からルールが変わったので注意したい。これまで相続開始前3年以内の相続人への贈与は相続財産に加算されていた(「持ち戻し」という)のが「7年以内」に拡大されたのだ。「年間1千万円単位など巨額の贈与を行う富裕層の節税阻止を狙った政策」(廿野さん)というが、庶民レベルでの影響も大きい。ともあれ暦年贈与をするのなら、早く始めるのがポイントだ。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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