大観衆の前でジャッジをする審判
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 プロ野球に欠かせない存在でありながら、メディアに取り上げられることはほとんどない。いまだに謎のベールに包まれている「審判」の世界。「過酷な仕事」という印象も強いが、実態はどうなのか。長年、プロ野球界を支えてきた元審判の2人に話を聞いた。※【前編】<プロ野球「審判」 スタートは「年俸102万円」 1軍定着に「最低10年」の過酷な現実>より続く

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 審判は、体力勝負でもある。パ・リーグ審判を29年務めた山崎夏生さん(69)はこう語る。

「試合中、選手は表裏のどちらかのイニングをベンチで休めますが、審判はそれができません。水分補給などはしますが、基本的には休憩なし、試合開始から終了までずっと立ちっぱなしです」(山崎さん)

炎天下で、倒れる審判もいる

 特に負担が大きいのが球審だという。

「審判が下す1試合のジャッジ数は500回程度ですが、球審はそのうちの7、8割以上に対応します。試合を左右する判定も多いため、前夜はベテランでも緊張のあまり寝付けないこともあります。球審には、選手の2試合分に匹敵するほどの疲労度があるといっても、決して言いすぎではないと思います」(同)

 NPB初代審判長も務めた井野修さん(70)は、近年厳しくなる夏の「暑さ」も、審判に大きな負荷をかけていると指摘する。

「この夏の暑さは深刻な問題です。日中35度を超える日はもうめずらしくない。1軍の試合はナイトゲームが多いのでまだいいですが、最も気温が高い時間帯に試合が始まる2軍を担当する審判は相当つらい。2軍の試合はドーム型の球場を使用することもないため、日光を遮るものもありません」

 熱中症対策が話題になるなか、炎天下で倒れる審判も少なからずいる。

「暑さによって体調不良を引き起こし、試合中に倒れている審判も少なくない。2軍の試合では、控え審判はいませんので、こうなると、少ない人数で試合をまわさなくてはいけません。これは負担が大きい。テレビでも『不要不急の外出は控えましょう』とこれだけ報道されていますから、試合開始を早める、もしくは遅らすなど、早急に対策をする必要はあると思います」(井野さん)

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